読みもの
2021.10.21
「音楽家である前に、人間であれ!」その7

ヴァイオリニスト・石田泰尚の硬派なメッセージ「ピアソラに教えられたこと」

石田組・組長こと、石田泰尚さんの初めての連載「音楽家である前に、人間であれ!」。今回は組長が心ひかれる作曲家について触れてもらいました。まずはタンゴの革命児、アストル・ピアソラについて。

石田泰尚
石田泰尚 ヴァイオリニスト

1973年、神奈川県川崎市生まれ。1995年、国立音楽大学を首席で卒業、新星日本交響楽団にアシスタントコンサートマスターとして入団し、1997年コンサートマスターに就...

取材・構成
能勢邦子
取材・構成
能勢邦子 コンテンツディレクター

「anan」元編集長。「Hanako」「POPEYE」元副編集長。2018年まで約30年間、マガジンハウスで雑誌や書籍の編集に携わり、話題作を次々に生み出す。担当した...

撮影:岩本慶三

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ピアソラといえば石田さんですよね」と言われることがあります。

最初に弾いたのは25年ぐらい前です。そのあと、2000年に結成したトリオ・リベルタで、たびたび弾くようになりました。リサイタルでもオールピアソラをやっていますし、三浦一馬さんにも声をかけてもらっていますし、もしかすると一番たくさん弾いている作曲家かもしれません。

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ピアソラは譜面どおりに弾くとカッコ悪いというか、なにかつまらない。それで、ピアソラが演奏しているオリジナルのキンテート(バンドネオン、ヴァイオリン、ギター、ピアノ、コントラバスの五重奏)を何度も聴きました。聴きながら譜面を見ると、全然違うことをやっている。アドリブまではいかないのですが、ちょっとしたタメやズレから生まれるグルーヴ感が、めちゃくちゃカッコいいわけです。それまで譜面どおりに正確に弾くクラシックを目指していた僕にとって、かなり大きな衝撃でした。

だから最初は、譜面の上に自分で音やタイミングを書き込んで、真似するところから始めました。今でも新しい曲をやるときには、オリジナルを聴くようにしています。キンテート・タンゴ・ヌエヴォ(新タンゴ五重奏団)のフェルナンド・スアレス・パスのヴァイオリンなんて最高です。

キンテート・タンゴ・ヌエヴォのトップトラック

こうして20年以上、自分なりに練習しているのですが、誰かに習ったわけでもないですし、ピアソラ的な表現ができているのか、自分がいいのか悪いのか、今でも正解はわかりません。ただ、三浦一馬さんや彼の師匠、ネストル・マルコーニさん(来日したときに共演しています)が喜んでくれる、それはうれしいことです。

ネストル・マルコーニのトップトラック

好きな作曲家、好きな曲はたくさんある。

でも、ピアソラが得意ですよねと言われると、「得意ではないです。好きなだけです」と答えます。得意な曲は何ですかと聞かれれば、「得意な曲は一曲もないです。好きな曲はたくさんあります」と答えます。ピアソラもベートーヴェンもブラームスもモーツァルトも好きです。好きですが得意ではない。

ピアソラで好きな曲を挙げると、〈革命家〉とか〈天使の復活〉とか。最近ソロで弾いた〈アヴェ・マリア〉も美しい。〈タンガータ〉もカッコいい。キリがないです。

石田組・組長が推すピアソラ楽曲

好きな作曲家は、マーラー。神奈川フィルハーモニー管弦楽団も京都市交響楽団も毎回マーラーでもいいぐらい好きです。「交響曲第4番ト長調」の第2楽章は、普通にチューニングしたヴァイオリンと長2度高く調弦したヴァイオリンを使い分けます。そして第4楽章にはソプラノの独唱が入ります。ひとつひとつの楽章が個性的で、そういった斬新な編成に、とても惹かれます。

マーラー「交響曲第4番ト長調」第2楽章(バーンスタイン指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)

あとは、ブルックナー。ブルックナーも全部がオルガン・シンフォニーみたいに壮大です。最近では、ブロッホも好きです。

プロになって初めて新星日本交響楽団のオーケストラバックで弾いたのは、ブルッフの1番のコンチェルトでした。2001年、神奈川フィルのコンサートマスターに就任したお披露目演奏会もブルッフで、どちらも指揮者は現田茂夫さんという思い出の曲です。

あまり人がやらないことをやりたい。

この間、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館で、ベートーヴェンのソナタ全曲演奏会をやりました。10曲全部を1日でやるのは3年前の横浜みなとみらいホール以来2回目です。13時〜15時30分、17時〜20時30分と2回に分けて演奏したのですが、体力も集中力も大変でした。

ベートーヴェンのソナタが収録されている石田さんのアルバム『LIVE』(ピアノ:中島剛、録音:2015年12月12日横浜市栄区民文化センターリリス ライヴ録音)

全曲をやるのは大変なのですが、いまやってみたいのは、ブラームスのソナタ3曲とシューマンのソナタ3曲を1日で弾くという演奏会です。あまり人がやったことのない全曲演奏に挑戦したいです。

バッハの無伴奏も全曲やったことがあります。バッハは6曲ですが、ベートーヴェン10曲より疲れます。イザイ全曲もやりました。

6月にやったオール・ブロッホはCDにしてもよかったかもしれません。あまり人がやらないですから。バッハの無伴奏はヴァイオリニストが満を持して出すイメージがありますが、いまはまったく出したいとは思っていません。

というのも、僕は一発勝負が好きなので、CDもスタジオ録音ではなくライブ版にこだわりたいのです。バッハはライブだと間違えそうな気がするし、出すのはいまではない気がします。何年か経って、そろそろ行くか! と思うことがあるかもしれませんが、いまではない。

ピアソラがライフワークのようになっていることもそう、好きな作曲家も好きな曲もCDを出すことも、僕自身のヴァイオリニストとしての巡り合わせやタイミングがあるのだと思います。

本日の私物拝見!

(左)父に抱き抱えられている3歳ぐらいのときの僕です。(右)左は都響のチェロ奏者、江口心一さん、しんちゃんです。スズキ・メソード以来の友達です。

公演情報
AION CLASSIC Screen Music Tribute

日時:2021年10月28日(木)19:00開演

会場:すみだトリフォニーホール

曲目:ピアソラ/オブリビオン

マンシーニ/メドレー・酒とバラの日々

ロータ/太陽がいっぱい・カビリアの夜

ヘス/ラヴェンダーの咲く庭で

モリコーネ/ニューシネマパラダイス

ガーシュイン/ラプソディ イン ブルー

ウィリアムズ/スターウォーズ コンサートセレクション

出演:三浦一馬(バンドネオン)、石田泰尚(ヴァイオリン)、菊池亮太(ピアノ)、りずむらいす、松村秀明(指揮)、東京佼成ウインドオーケストラ

料金:S席7,000円 A席6,000円

詳しくはこちら

YAMATO String Quartet

日時:2021年10月30日(土)15:00開演

会場:旭川市大雪クリスタルホール音楽堂

曲目:シューベルト/弦楽四重奏曲第14番ニ短調D810「死と乙女」

ピアソラ/「天使の組曲」より

伊福部昭/ゴジラ

モリコーネ/ニューシネマパラダイス

ビートルズメドレー

キング・クリムゾン/21世紀の精神異常者たち

出演:石田泰尚(第1ヴァイオリン)、執行恒宏(第2ヴァイオリン)、榎戸崇浩(ヴィオラ)、阪田宏彰(チェロ)

料金:全席指定4,000円 学生(小学生~大学生)2,500円

詳しくはこちら

京都市交響楽団 東京公演

日時:2021年11月7日(日)14:00開演

会場:サントリーホール・大ホール

曲目:ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調作品67「運命」

マーラー/交響曲第5番嬰ハ短調

出演:広上淳一(指揮)

料金:S席6,500円、A席6,000円、B席5,500円、P席4,000円

詳しくはこちら

石田泰尚
石田泰尚 ヴァイオリニスト

1973年、神奈川県川崎市生まれ。1995年、国立音楽大学を首席で卒業、新星日本交響楽団にアシスタントコンサートマスターとして入団し、1997年コンサートマスターに就...

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能勢邦子
取材・構成
能勢邦子 コンテンツディレクター

「anan」元編集長。「Hanako」「POPEYE」元副編集長。2018年まで約30年間、マガジンハウスで雑誌や書籍の編集に携わり、話題作を次々に生み出す。担当した...

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