読みもの
2021.11.04
「音楽家である前に、人間であれ!」その8

ヴァイオリニスト・石田泰尚の硬派なメッセージ「人として最低限の『礼儀』とは?」

石田組・組長こと、石田泰尚さんの初めての連載「音楽家である前に、人間であれ!」。ご存じのとおり、組長は「礼儀」にうるさいです。でもそれには、筋の通った理由があるのです。

石田泰尚
石田泰尚 ヴァイオリニスト

1973年、神奈川県川崎市生まれ。1995年、国立音楽大学を首席で卒業、新星日本交響楽団にアシスタントコンサートマスターとして入団し、1997年コンサートマスターに就...

取材・構成
能勢邦子
取材・構成
能勢邦子 コンテンツディレクター

「anan」元編集長。「Hanako」「POPEYE」元副編集長。2018年まで約30年間、マガジンハウスで雑誌や書籍の編集に携わり、話題作を次々に生み出す。担当した...

撮影:岩本慶三

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礼儀は大事だと思います。きちんと挨拶をする。歩きながら携帯をいじらない。お年寄りには電車で席を譲る。僕がこの格好で席を譲ると驚かれますが、でも当たり前のことではないでしょうか。それなのに、できない人がたくさんいます。

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僕はコンサートホールなどへ行くと裏方のかたがたにも必ず「よろしくお願いします」「ありがとうございました」と挨拶をします。スタジオや他の現場でもお世話になるかたがたに挨拶をします。

話し方、言葉づかいも大事です。

僕は父にも兄にも敬語で話しています。母には普通に話していましたし、兄は父に普通に話していますが、なぜか僕は子どもの頃からずっとそうです。父には昔は緊張してしゃべれませんでした。尊敬の気持ちもあると思います。人生の節目、節目、大切なことがあると父に報告しますが、「〜させてください」「よろしくお願いします」「ありがとうございます」と全部敬語です。

自分より明らかに若い人たちにも最初は敬語で話します。親しくなればタメ口にもなりますが、それでも上から目線で話すことは絶対にしません。こう見えて、上から目線で話すキャラでは全然ないはずです。

苦手なのは「礼儀知らず」と「口だけ達者」。

礼儀が大事だと思っている分、苦手なのは礼儀のない人です。

例えば、初対面でズカズカ入ってくる人。年上でも妙に馴れ馴れしく「石田ちゃん、君さあ」みたいに話しかけられたら、ムッとしてしまう。ムッとするし、何か言うでしょうね。

何年も前の話です。あるトリオの本番で地方に行った時に主催者のかたたちの打ち上げがありました。その主催者の一人が、最初は僕にではなく、明らかに年上のピアニストにズカズカと話しかけていて、それでカチンと来てしまった。そのあと、僕にも同じように何か言ってきたので、わーっと怒って、「僕、帰ります」と。それで打ち上げをお開きにしてしまったのです。ピアニストのかたは僕がなぜ怒っているかわからなくて、外に出てから「石田くん、どうしたの」と聞いてきました。「だって、なんか友だちみたいにズカズカ言うから。怒っちゃってすみませんでした」と謝りました。

礼儀というのは社会的な行動や作法ですが、もとを辿れば周りの人に敬意をもって接するところから始まります。周りの人に感謝があれば自然と振る舞えるものです。

そういう意味では、口だけ達者な人も苦手です。人の話に耳を貸さずに調子に乗っている。やることをやらずに大きなことを言う。えらぶっているのに何もできない。

実力もないのにイキっている若手を見るとかわいそうだなと思います。僕も学生のときに勘違いしていた時期がありましたから、わからなくもないのですが、幸い僕には“人の話を聞く“謙虚さがあった。先生がたや周りのアドバイスをきちんと受け入れる謙虚さがないと伸びないと思います。プロになるとアドバイスをしてくれる人は、ただでさえ減ってきます。それでいい気になるのではなく、ますます自分に厳しく謙虚にならないといけません。

人の話に耳を貸さずに調子に乗っている人を見るとかわいそうだな〜と思いますが、さよなら〜という感じです。昔は説教したこともありますが、最近は最初から近づかない。そういう人に怒るのは疲れるし面倒なだけです。

お客さんに求める礼儀はひとつだけ。

実際、第一線で活躍している音楽家は、礼儀正しく謙虚なかたばかりです。東京都交響楽団の矢部達哉さんなんて年下の僕にも敬語で話してくれて、困っちゃうぐらい、いつも丁寧に接してくれます。逆に、礼儀正しく謙虚な人だけが残っていく世界なのかもしれません。

石田組もみな礼儀正しいです。ヴァイオリンを習っている子どもから「将来石田組に入りたい」とファンレターをもらったことがあるのですが、子どもたちが見ていると思うと、ますます礼儀を大事にしたいです。

お客さんに求める最低限の礼儀はなんといっても携帯電話を切ること。あとプログラムなどの紙をくしゃくしゃやる音。あれだけはイラつきます。あとは自由に楽しんでもらえればいい。どう感じてもらっても、どう言ってもらっても構わないです。

僕の目標は少しでも長く演奏活動をしていくことです。きっと演奏も変わってきたでしょうし、これからも変わっていくでしょう。お客さんにもその変遷を楽しんでいただき、末長くお付き合いいただければうれしいです。

本日の私物拝見!

「野菜と酵素」は母が見つけて以来、毎朝飲んでいます。本番前のエネルギーチャージにはこれ、「ユンケル黄帝顆粒DCF」。僕のパワーのお助けグッズです。

石田さんが出演する公演情報
京都市交響楽団 東京公演

日時:2021年11月7日(日)14:00開演

会場:サントリーホール・大ホール

曲目:ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調作品67「運命」

マーラー/交響曲第5番嬰ハ短調

出演:広上淳一(指揮)

料金:S席6,500円、A席6,000円、B席5,500円、P席4,000円

詳しくはこちら

硬派弦楽アンサンブル 石田組

日時:2021年11月21日(日)14:00開演

会場:軽井沢大賀ホール

曲目:エルガー/弦楽セレナードホ長調Op.20

チャイコフスキー/弦楽セレナードハ長調Op.48

ラター/弦楽のための組曲

バーンスタイン(近藤和明編曲)/荒野の七人

ウィリアムズ(松岡あさひ編曲)/シンドラーのリスト

U.K.(近藤和明編曲)/シーザーズ・パレス・ブルース

サイモン&ガーファンクル(松岡あさひ編曲)/明日に架ける橋

クイーン(松岡あさひ編曲)/ボーン・トゥ・ラブ・ユー

料金:全席指定 1・2階席5,000円、2階合唱席・立見席4,000円、学生2,000円

詳しくはこちら

ピアソラ生誕100年記念 三浦一馬 東京グランド・ソロイスツ

日時:2021年11月23日(火・祝)14:00開演

会場:かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール

曲目:オール・ピアソラ・プログラム

第1部 リベルタンゴ、ブエノスアイレスの冬、オブリヴィオン、ツィガーヌ・タンゴ、アディオス・ノニーノ、デカリシモ

第2部 ディヴェルティメント、ブエノスアイレス午前零時、現実との3分間、螺鈿協奏曲

出演:東京グランド・ソロイスツ(室内オーケストラ)/三浦一馬(バンドネオン)、石田泰尚(ソロ・ヴァイオリン)、山田武彦(ピアノ)、大坪純平(ギター)、石川智(パーカッション)、髙橋洋太(コントラバス)その他

料金:全席指定 6,000円

詳しくはこちら

石田泰尚
石田泰尚 ヴァイオリニスト

1973年、神奈川県川崎市生まれ。1995年、国立音楽大学を首席で卒業、新星日本交響楽団にアシスタントコンサートマスターとして入団し、1997年コンサートマスターに就...

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能勢邦子
取材・構成
能勢邦子 コンテンツディレクター

「anan」元編集長。「Hanako」「POPEYE」元副編集長。2018年まで約30年間、マガジンハウスで雑誌や書籍の編集に携わり、話題作を次々に生み出す。担当した...

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