読みもの
2021.11.18
「音楽家である前に、人間であれ!」その9

ヴァイオリニスト・石田泰尚の硬派なメッセージ「神奈川フィルをもっとメジャーに」

石田組・組長こと、石田泰尚さんの初めての連載「音楽家である前に、人間であれ!」。組長にとってホームグラウンドともいうべき神奈川フィル。20年にわたる活動の中で着実に育まれてきた思いとは。

石田泰尚
石田泰尚 ヴァイオリニスト

1973年、神奈川県川崎市生まれ。1995年、国立音楽大学を首席で卒業、新星日本交響楽団にアシスタントコンサートマスターとして入団し、1997年コンサートマスターに就...

取材・構成
能勢邦子
取材・構成
能勢邦子 コンテンツディレクター

「anan」元編集長。「Hanako」「POPEYE」元副編集長。2018年まで約30年間、マガジンハウスで雑誌や書籍の編集に携わり、話題作を次々に生み出す。担当した...

撮影:岩本慶三

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2001年に神奈川フィルハーモニー管弦楽団でコンサートマスターを務めるようになって20年以上が経ちました。

コンマスの仕事は、指揮者の求める音を感じ取って団員さんに伝えること。そして、オーケストラの全員が気持ちよくストレスなく演奏できる雰囲気づくりだと思っています。それはリハーサルから始まっていて、緊張もありつつ、ちょっと笑いが起きるような緩和もある、そんな良い雰囲気が本番にもつながります。

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大学1年のときにオーケストラの授業で先生に、「石田くんはコンマス向きね」と言われたことがあります。「は? なんすか? それ」「そのうちわかるわよ」みたいな感じでしたが、いま思うと、確かに向き不向きはあって、僕はコンマスに向いているのかもしれません。

それでも20年以上もいると、辞めたくなったことが今までに3回ぐらいあります。今は神奈川フィルを辞め、京都市交響楽団で特別首席チェロ奏者をしている山本裕康さんに、「裕康さん、俺、もう辞めようかと思うんです」と相談したこともあります。「辞めないで。気持ちはわかるよ」とごはんをご馳走になりました。父にも「そろそろ辞めようかと思うんです」と相談し、「辞めないほうがいい。今は辞めちゃだめだ」と止められたこともあります。苦労したとか何が嫌ということは全くないのですが、20年というと、それぐらい長い時間です。

だから、「石田さんにとって神奈川フィルとは」と聞かれても答えられない、それぐらい長い。2020年から特別客演コンサートマスターを務めている京響では、まだ猫をかぶっているかもしれませんが、神奈川フィルでは全くかぶっていないことは確かです。

2022年度は指揮者が交代する。

2010年ぐらいには、神奈川フィルが存続の危機といわれ、団員さんたちが終演後ロビーで寄付を集めたりしたこともありました。そこから、よく持ち直したと思います。僕も頑張ったつもりですが、2014年から常任指揮者を務めてきた川瀬賢太郎さんやコンマスの﨑谷直人さんの寄与が大きいと思います。

神奈川フィルを8年間牽引してきた川瀬さんは、2021年シーズンで任期を終え、来年度、4月からは沼尻竜典さんを音楽監督に迎えます。

沼尻さんとはもう長年のお付き合いです。僕が新星日本交響楽団に入ったときに沼尻さんは正指揮者でした。僕が京響に初めて行ったときの指揮者も沼尻さんでした。この前はびわ湖ホールで久しぶりにピットに入り、ワーグナーの《ローエングリン》を弾きましたし、再来年の《ニュルンベルクのマイスタージンガー》も決まっています。神奈川フィルでも京響でも何度もご一緒しています。

ワーグナー:歌劇《ローエングリン》(ハイライト)ゲオルグ・ショルティ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

沼尻さんは頭がいいし耳がいい。全部の音が聴こえているかのように敏感で、リハーサルの進め方も上手くて、それこそ団員さんたちの雰囲気づくりは抜群です。

ただ、指揮者が代わるからといって僕の仕事は変わりません。今は川瀬さんを全力でサポートしているし、沼尻さんがいらしたら全力でサポートする。指揮者によって相性がいいとか悪いとか、そういうことはありません。

オーケストラはなんだかんだいっても指揮者によるところが大きいので、沼尻さんにはぜひ力強く引っ張っていってほしいです。

オーケストラの仕事と個人の仕事。

そして、神奈川フィルはこれから、もっともっとメジャーになってほしい。

そのためには、演奏家が演奏を頑張るのは当然ですし、スタッフや事務局、神奈川県や横浜市、関係者がみんな一丸となって頑張るしかありません。SNSも宣伝もそうです。いっぱい宣伝して満席にする。個人が“がむしゃら”に頑張るように、神奈川フィル全体としても“がむしゃら”に頑張らないといけない。

どこそこのオーケストラが存続危機などというニュースを見ると心が痛みます。自主運営のオーケストラとか本当に大変だと思います。だから、神奈川フィルももっともっと頑張らないと。

僕はソロやユニットの活動が増えていますが、どんなときも「神奈川フィルハーモニー管弦楽団・首席ソロ・コンサートマスター」という肩書きがついて回ります。例えば、石田組を見てくれたお客さんが、「オーケストラもやっているのね。オーケストラも行ってみようかしら」と思ってくれるかもしれない。例えば、インタビューを読んでくれたクラシックに馴染みのないお客さんが「神奈川フィルって聴いたことないなぁ。調べてみよう」と思ってくれるかもしれない。ソロの活動、ユニットの活動、オーケストラの活動、それがうまく循環しています。

だから、たとえ神奈川フィルの演奏に乗っていないときでも、僕自身が活躍することで神奈川フィルに還元できる部分はあると思っています。どんな小さな仕事も手を抜かないのは、神奈川フィルに対する責任感みたいな部分もあります。これからも神奈川フィルの名前を売る僕なりの活動は、めいっぱい続けていくつもりです。

本日の私物拝見!

五歳の七五三のときです。あまり覚えていないのですが。

石田さんが出演する公演情報
三浦一馬キンテート~ピアソラ・ザ・ベスト

日時:2021年12月2日(木)18:45開演

会場:三井住友海上しらかわホール

曲目:ピアソラ/デカリシモ、オブリヴィオン、ミケランジェロ70、スール:愛への帰還、ブエノスアイレスの夏、悪魔のロマンス、アディオス・ノニーノ、リベルタンゴ、天使のミロンガ、エスクアロ、ブエノスアイレスの冬、現実との3分間、五重奏のためのコンチェルト

出演:三浦一馬(バンドネオン)、石田泰尚(ソロ・ヴァイオリン)、山田武彦(ピアノ)、大坪純平(ギター)、髙橋洋太(コントラバス)

料金:全席指定 S席6,000円、A席5,000円

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座間市市制施行50周年記念 ベートーヴェン交響曲第九番「合唱付」

日時:2021年12月11日(土)15:00開演

会場:ハーモニーホール座間 大ホール

曲目:エルガー/威風堂々

ベートーヴェン/交響曲第九番「合唱付」

出演:石﨑真弥奈(指揮)、佐藤美枝子(ソプラノ)、城守香(アルト)、錦織健(テノール)、小松英典(バリトン)、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、ハーモニーホール座間 合唱ワークショップ参加者

料金:全席指定 S席6,500円、A席5,000円

詳しくはこちら

硬派弦楽アンサンブル「石田組」in 立川2021

日時:2021年12月12日(日)14:00開演

会場:たましんRISURUホール(立川市市民会館)大ホール

曲目:チャイコフスキー/弦楽六重奏曲ニ短調「フィレンツェの思い出」作品70

シルヴェストリ(松岡あさひ編曲)/バック・トゥ・ザ・フューチャー

チャップリン(松岡あさひ編曲)/スマイル

クイーン(松岡あさひ編曲)/輝ける7つの海 そのほか 

出演:ヴァイオリン:石田泰尚、丹羽洋輔、鈴木浩司、野尻弥史矢

ヴィオラ:中村洋乃理、生野正樹

チェロ:辻本玲、門脇大樹

料金:全席指定 S席5,000円、A席4,000円

詳しくはこちら

石田泰尚
石田泰尚 ヴァイオリニスト

1973年、神奈川県川崎市生まれ。1995年、国立音楽大学を首席で卒業、新星日本交響楽団にアシスタントコンサートマスターとして入団し、1997年コンサートマスターに就...

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能勢邦子 コンテンツディレクター

「anan」元編集長。「Hanako」「POPEYE」元副編集長。2018年まで約30年間、マガジンハウスで雑誌や書籍の編集に携わり、話題作を次々に生み出す。担当した...

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