音楽録音用カセットデッキ*、高性能なラジカセに続いてカセットテープが若者の必須アイテムになったもうひとつのきっかけがウォークマンの登場です。
1979年、それまでカセットテープは録音できることに意義がある、という常識を打ち破った製品がソニーから登場しました。TPS-L2、初代ウォークマンです。
スピーカーを内蔵していないためヘッドホンでしか聴けない、というのも画期的でした。
*カセットデッキ: カセットテープの録音・再生装置。増幅装置(アンプ)に接続し、録音時にはマイクを、再生時にはスピーカーを接続して用いる。
当初社内でも「売れない」と言われたのですが、当時ソニーの会長だった盛田昭夫氏の英断で発売に踏み切ったという逸話があります。結果、大ヒットとひとことで言えないほど大きなブームとなり、多くの人のライフスタイルを変えてしまいました。
こうしたヘッドホン専用のコンパクトなカセットプレーヤーを、メーカーにかかわらず「ウォークマン」と呼んでしまうのはこの初代ウォークマンの大ヒットがあまりにも印象的だったからです。一般名称としては「ヘッドホンステレオ」と呼ぶのが適当です。
そんなウォークマンの大ヒットを他のメーカーが黙って見ているはずもなく、さまざまなメーカーが追随しました。中でも、当時ソニーのグループ会社だったアイワの「カセットボーイ」はウォークマンより安く、むしろウォークマンより多機能なモデルが多いこともあって、とくに若年層を中心に大きな支持を得ました。
ちなみにアイワは世界で最初にラジカセを作ったメーカーと言われています。ソニーよりも若い人に人気のブランドでした。
また家電メーカーもこぞって参入。写真は左が三洋電機の「JJ」、右がシャープの「Being」。東芝の「ウォーキー」も有名です。中でも松下電器は並々ならぬ執念でウォークマンの追撃を続けます。
1980年頃は「ウェイ」、その後、「GO」、「ジャンプ」とシリーズを連発。ですがウォークマンの牙城を崩すには至りません。
ところが1993年にMD*が発売されます。圧倒的に便利なMDは大ヒット。1995年中頃にはポータブルモデルも普及し、カセットテープのヘッドホンステレオは徐々に勢いを失います。そのような状況で、ついに松下電器のヘッドホンステレオが大ヒットします。それが「ショックウェーブ」シリーズです。
*MD:ソニーが開発した直径64ミリのミニディスク。再生だけでなく録音もできた。
まるでG-SHOCKのようなタフなイメージと重低音を特徴としたボディは、それまで小型化に邁進してきたヘッドホンステレオの流れとはまったく違いました。もともとアメリカの若者の間で大ヒット。そのブームを逆輸入した形で日本でもヒットしました。
写真はシリーズ最後期の1998年に登場したRQ-SW77というモデルです。
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さて、ざっとカセットテープ、ラジカセ、ヘッドホンステレオをご紹介してきました。
当初便利なだけだったカセットテープは、やがて「カッコいい」アイテムとして若者の必需品となっていきました。そこにはラジカセやヘッドホンステレオの魅力も大きかったと思います。
次回はこうした器機を使って、自分の好きな曲を詰め込んだカセットテープを作ってみたいと思います。