——それほどにお二人はチェロという楽器の新たな可能性や発見を聴衆に提示したということだと思います。
ルカ ありがとうございます。僕たちも、チェロの可能性を世界に提示するのが自分たちの役割だと思い、2CELLOSの活動を始めたんです。ほかにも、やはり自分たちよりも若い世代をインスパイアして、「自分たちも楽器を弾いてみたい」と思ってほしいという気持ちもありました。
すると長く続けているうちに、「2CELLOSのおかげで、音楽が大好きになりました」「自分も楽器を演奏するようになりました」「まるでクラシック音楽と恋に落ちたようです」と手紙や声をもらうことが増えて、自分たちの予想していた以上のことが成し遂げられたのだと実感しています。
だから今は、新たなチャレンジをするとき。2人それぞれが新たな旅路に出るべきなのだと思っています。
2 CELLOSの最新アルバム『デディケイテッド~デラックス・エディション~』
——では、ルカさんはどのような「旅路」に出るのでしょうか。
ルカ 私の新たな旅路は、「作曲を通して、自分自身を表現すること」。私はずっと、作曲をすることが夢でした。これまでは2CELLOSの活動もあり、あまり専念できなかったのですが、今後は腰を据えてやりたいと思っています。そしてミュージシャンとして、作曲家として、そしてチェリストとしての自分を表現していきたいのです。
ルカ 実はいまレコーディングを控えていて、そのための作品も書き終えました。来年の春のリリースを目指しています。オーケストラや弦楽器、ピアノ、電子楽器、そして僕のチェロで、新たな作品をお送りできる予定です。
おそらく、これらの作品を通して、僕自身のもっともピュアな部分が見えてくるはずです。これまで2CELLOSを通して培ったことや、学生時代に学んだことをさらにリフレッシュさせて、新たなものを加えていきたいと考えています。
音楽や人生とは本当に美しいもので、決して学びが止まることはありません。それが積み重なった上で、新たなものを皆さんに聴いていただけるのではと思います。
——では具体的に、2CELLOSを通してどのようなものを培ったのでしょうか?
ルカ やはり2CELLOSでは、大きなライブコンサートをたくさん経験しました。ホールにいる大勢の人々のリアクションも、2CELLOSだからこそ目の当たりにできたもの。クラシックのコンサートとはまた違いますからね。
それに、クラシック以外のロックやポップスの音楽も多くやってきたため、クラシックにはない新たなサウンドとの出会いがありました。そしてそれらをミキシングしたり、編集したり、プロデュースしたりして、他者の音楽をいかに自分たちのものにしていくのかも学びました。
ライブやツアーに携わる人やレコードレーベル、マネジメントの人々、クラシックとはまた違うさまざまな視点の人と仕事をする機会も多くありました。それらのすべての経験を通して、人間として一つの成熟期を迎えられたと思っています。
——ルカさんは過去に、「新しいものを作るには、今まであった常識やルールを壊しながら自分の道を作り出す必要がある。そうでないと良いものは生まれない」と語っていたことがありますね。このスタンスは今でも変わっていませんか?
ルカ そうですね。僕たちがこれから出る旅路は、2人にとってまったく新しいものになります。そのためには、まずは自分を信じて、創造していくことが大事。これほど満ち足りたプロセスはないと思います。
活動を経て思うのは、もはやクラシックなどのジャンルは関係なく、「Good music」こそが僕にとって大事なものなのだということ。今後は一つのファッションやジャンルにとらわれることなく、僕の心を通して魂に映し出された「Purest form=ピュアな音楽」を探求していきたいです。
——2013年に日本のテレビCMに出演されて、そこで2CELLOSのファンになった方も多いかと思います。解散を惜しむ声もたくさんありますが、今後お二人の再演が見られるチャンスはありますか……?
ルカ まず言わなければいけないのが、近い将来の再演はないということ。皆さんにお悔やみ申し上げます(笑)。しかし、長い長い人生です。これから何が起きるかわかりませんからね。
しかし今はとにかく、「Music must go on」。僕たちは次のステップに進まなければいけません。多くの皆さんの支えなくして、ここまでやってこられませんでした。本当にありがとうございました!
NTT docomoのテレビCMで使用された「Kagemusha」
【大阪公演】
日時: 2022年11月21日(月)19:00開演
会場: 丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)
【東京公演】
日時: 2022年11月22日(火)19:00開演
会場: 日本武道館
出演: 2CELLOS(ルカ・スーリッチ、ステファン・ハウザー)
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