牛尾憲輔――アグレッシヴなビート、不穏ながら美しいテクノサウンド 劇伴における特異な存在 

冒頭で触れた牛尾はそもそも、agraph名義でのアーティスト・キャリアや実績も絶大でありながら、2014年以降から数々の注目アニメ/映画の音楽を手がけている特殊な存在だ。アニメを手がけることはそこまで多くはないが、転機と言えるのは「DEVILMAN crybaby」(2018年)だろう。

永井豪原作の漫画作品「デビルマン」のリメイクとしてNETFLIXで放送された同アニメは、その内容の過激さなども話題を呼んだが、音楽を牛尾が手がけたことにより、人気に拍車がかかったとも言える。牛尾の得意とするブレイクビーツ、テクノ、エレクトロニカは、アニメを観ながらクラブで音楽を愉しんでいるような意識に誘ってくれるところも前代未聞だった。

「DEVILMAN crybaby」トレーラー

また、映画「子供はわかってあげない」(2021年)では、学生の淡い恋心をソリッドなアンビエント音楽で彩り、いわゆる「青春もの」のアプローチとしては異彩を放っていた。忘れずに記載したいのは、現在NHK Eテレで放送中の「ワルイコあつまれ」の音楽も手がけているということだ。

そんな牛尾が「チェンソーマン」の劇中音楽をどう料理するのか?「DEVILMAN crybaby」同様、ダークファンタジー作品とのマッチングはお墨付き。得意とするアグレッシヴなビート、不穏ながら美しいテクノサウンドは、「チェンソーマン」序盤の底知れないムードと連動して、早くも大きな反響を呼んでいる。この先の放送も要注目だ。

「チェンソーマン」オリジナル・サウンドトラック(エピソード1-3)

NIEDA IKU
NIEDA IKU

編集、ライター、A&Rなど。神奈川県生まれ。音楽大学でピアノを専攻し、レコード会社に就職。その後出産を機にフリーランスに。好きな音楽は雑多でジャンルを問わず聴...