ヴィヴァルディとJ. S. バッハから知る、時代の最先端の表現

そしてベルリン・バロック・ゾリステンとヤンによってJ・S・バッハの「ヴァイオリン協奏曲第2番」とヴィヴァルディの「四季」が演奏される。

「おそらく世界でもっとも知られているクラシックの楽曲がヴィヴァルディの『四季』でしょう。日本でもそうだと思います。しかし、この名曲はヴァイオリニストにとってはかなりむずかしい協奏曲のひとつでもあるのです。ヴァイオリンを得意としたヴィヴァルディはこの作品のなかに当時の最先端の奏法を組み込みました。それによって、ヴェネツィアの四季の多彩な表情が音楽として表現されているのです。

実は、ひとつひとつの季節を演奏したことはあるのですが、全体を一気に弾くのは今回が初めてとなります。その意味でも今回の日本ツアーはとても楽しみです」

モダンとバロック両方にすばらしい知見を持つヴァイトハースの教えを受けているということで、その影響も聞いてみた。

「ヴァイトハース先生の場合、個々の作品のレッスンに入る前に、その作品が置かれたバックグラウンド、つまりどういう時代の作品なのかということについても詳しく考えるところから始まります。

たとえば今回のツアーの作品でいえば、ヴィヴァルディとJ. S. バッハのつながりも大きなポイントとなります。というのも、バッハはヴィヴァルディの作品を収集、研究し、さらにそれを自分なりのスタイルで、ヴァイオリン協奏曲をチェンバロ協奏曲などに編曲していました。そうやって、イタリアの協奏曲のスタイルがその後のドイツの協奏曲のスタイルに影響を与えていったことがわかるはずです。だからバッハの協奏曲とヴィヴァルディの『四季』を並べて演奏するということに、歴史的な意味が出てくると思っています」

ひじょうに明快に自分のアイディアを伝えてくれるヤン。まさにこうした若い才能とベルリン・バロック・ゾリステンのような腕利きたちの共演が実現する点が、今回のツアーの醍醐味である。

「これまで日本で演奏する機会が少なかったので、ぜひ、僕の演奏を多くの方に聴いていただきたいです」

とヤン。もちろん私たち日本の聴衆も楽しみに待っている。

公演情報
ベルリン・バロック・ゾリステン with ヤン・インモ

日時:2024年9月27日(金) 19:00開演

会場:浜離宮朝日ホール

出演:ベルリン・バロック・ゾリステン、ヤン・インモ(ヴァイオリン)

ベルリン・バロック・ゾリステン 予定メンバー
【ヴァイオリン】 ヴィリー・ツィンマーマン、ドリアン・チョージ、アルヴァ―ロ・ペラ、ライマー・オルロフスキー、アンジェロ・デ・レオ、エヴァ・ラブチェフスカ、土岐祐奈
【ヴィオラ】 ヴァルター・キュスナー、ユリア・ガルテマン
【チェロ】 オイヴィント・ギムセ
【コントラバス】 ウルリッヒ・ヴォルフ
【チェンバロ】 ラファエル・アルパーマン

曲目:

J.C.F.バッハ:弦楽のためのシンフォニア ニ短調
J.S.バッハ:《音楽の捧げもの》BWV1079より 「6声のリチェルカーレ」
C.P.E.バッハ:弦楽のためのシンフォニア ヘ長調
J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ホ長調 BWV1042 (ソロ:ヤン・インモ)
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集《四季》 (ソロ:ヤン・インモ)

料金:全席指定15,000円(税込)

問い合わせ:朝日ホール・チケットセンター 03-3267-9990

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片桐卓也
片桐卓也 音楽ライター

1956年福島県福島市生まれ。早稲田大学卒業。在学中からフリーランスの編集者&ライターとして仕事を始める。1990年頃からクラシック音楽の取材に関わり、以後「音楽の友...