チャイコフスキーの交響曲第6番《悲愴》自筆のスケッチ(下書き)。《悲愴》というタイトルは本人の命名による。

振り切った《悲愴》の名演3選でブルーに浸ろう!

《悲愴》の録音はたくさんある。名指揮者と言われる人はたいてい録音していると言ってもいいぐらいだ。しかし、普通に名盤を選ぶのでは面白くない。ここではその中から3つ、どこか普通じゃない、振り切った名演奏をご紹介しよう。

テオドール・クルレンツィス指揮 ムジカ・エテルナ(2016年録音)

ギリシャ出身の指揮者クルレンツィスと、ロシアのオーケストラ「ムジカ・エテルナ」は、今一番熱いコンビだ。彼らの《悲愴》は、細部まで突き詰めた、えぐり込むような凄まじい表現で、クラシック音楽界を騒然とさせた。

レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団(1986年録音)

20世紀を代表する天才指揮者バーンスタインは激しい感情表現で知られた人だったが、1980年代の一時期、異常に遅い演奏をたてつづけに行なっていたことがある。この《悲愴》は彼の得意曲だったが、この録音だけ異常に遅い。特にフィナーレでは、聴いたことのない遅さで圧倒的な嘆きの音楽が繰り広げられる。

コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団(1957年録音)

3つめはちょっとマイナーな録音だ。ルーマニア出身の指揮者シルヴェストリは、たっぷりと感情をこめて、やりたい放題にテンポを動かす濃厚な演奏をする人だった。今でも一部に(ごく一部だが)熱狂的なファンがいる。この《悲愴》は、随所で大見得を切りながら進む個性的な演奏だ。最初はものすごく違和感があるが、中毒性がある。

ナビゲーター
増田良介
ナビゲーター
増田良介 音楽評論家

ショスタコーヴィチをはじめとするロシア・ソ連音楽、マーラーなどの後期ロマン派音楽を中心に、『レコード芸術』『CDジャーナル』『音楽現代』誌、京都市交響楽団などの演奏会...