一枚一枚が物語る、“ショパンコンクールとは何か”

——これまでに印象に残っている一枚はありますか?

グジェンジンスキ これがベストだと思っている写真は実はないのですが、2015年大会で、ゲオルギス・オソキンスさんのファイナルを撮ったときのことは印象に残っています。私はステージの中ほどに待機し、画面の中に指揮者、オソキンスさん、オーケストラのメンバーが収まる密度の高い撮影で、テクニック上難しかったことで記憶に残っています。

2015年大会。オソキンスさんのファイナルステージ
©WojciechGrzedzinski

グジェンジンスキ そのほかには、コンテスタントたちが自分の出場アナウンスを舞台袖で聞き、ステージへ向かう1分前の写真を撮ったポートレートシリーズがあります。コンテスタントたちのもっとも集中した表情からは、このコンクールが一体何であるかを十分に感じ取っていただけると思います。今年の予備予選でも同じシリーズを撮ってまとめましたが、こちらをご覧いただければ、10月の本大会では一体彼らに何が待ち受けているのか、非常によくおわかりいただけるでしょう。

©WojciechGrzedzinski
©WojciechGrzedzinski
©WojciechGrzedzinski
©WojciechGrzedzinski

——まもなくショパンコンクールが幕を開けます。何度もコンクールの撮影をされていますが、今回楽しみにしていることはありますか?

グジェンジンスキ 終わりを待ち遠しく思っています(笑)。これは、半分冗談で半分本気です。というのも、コンクール期間は毎日14、15時間仕事をしなければならない、とても過酷な3週間なんです。

しかし、それ以上に、今回もコンテスタントたちのさまざまな表情や感情をカメラに収められることがうれしくてなりません。今回のコンクールをいかに感情豊かに描くかということに加えて、これまでとは違った方法での表現にも挑戦したいと思っています。今までに撮れたことのないような一枚で、今年のショパンコンクールを記録してみせます。

取材・文
東ゆか
取材・文
東ゆか 編集者・ライター

武蔵野音楽大学声楽科卒業、二期会オペラ研修所本科修了。音楽活動や会社員を経てフリーの編集者・ライターへ転身。趣味は散歩と山登り。フランスが好き。