探しだして1年半後、日本に入ってきたときに、これに一目惚れ!購入しました(両親に買ってもらいました。感謝!)。弾き始めてから自分でも驚くほどの変化があり、表現が多彩に、深くなったと感じました。
自分の望む表現を可能にしてくれる、この楽器によく出会ったなあと感謝しています。聴いてくださるお客様からも、この楽器は私にぴったり、音が好き!といつも言われます。
音色は、低音域は懐が深く、話をすべて受けとめてくれそうな男性の大人物。高音域は甘く、ベルベットの生地のような艶やかさ。ワインでいえばヴァイオリンと同じイタリアのバローロ。フランスでは超高級なロマネ・コンティ。愛称は《私の心の増幅器》となりました! 大切に可愛がっています。
一目ぼれで、即購入。明るく積極的な大谷さんらしいですね。音域を人間に例えるのもいいですね。大人の男性とおっしゃっていますが、頼もしい存在なのでしょう。大谷さんの弾くチャイコフスキーのコンチェルトでの、あの安定感と歌は楽器への信頼からきているのですね、きっと。
前にお借りしていたピエトロ・グァルネリを長期間入院させることになり、翌週サントリーホールでの演奏会で弾く楽器がなくなり、大至急で代替楽器が必要になりました。その時に日本ヴァイオリンの中澤社長にご相談したら、”海外へ行くはずだった“デル・ジェス”がコロナ禍で日本に留まっていて、たまたま1本あります。弾いてみますか?”と。
二つ返事で駆けつけ、奇跡的にこの“デル・ジェス”に出逢いました。音楽性の変化というより、楽器というのは自分の分身でもあり信頼できるパートナーのような感覚でいるので、手の感覚と楽器の振動の対話がうまくいっていないとその楽器の最高の音が出せません。
この楽器は、弾き始めて1年位は暴れ馬のような性格で、下手に出ても上から捻じ伏せてもダメ、向き合おうとしても中々細胞を開いてくれない感じがあり、思った音がすぐに出るまでに時間がかかりましたが、一度タッグが上手くいき始めた瞬間から物凄い勢いでスムーズに応えてくれるようになり、今は素晴らしき相棒です。
ロストロポーヴィチのように楽器を妻と呼べる関係性ではあるものの、楽器の名を呼ぶ機会がないせいか名前は付けていません。仮にヴァイオリンがロシア語で男性名詞だったら夫♡とか言うだろうか?と想像してみましたが、それもないかも(笑)。でも私の存在の8割です。
グァルネリと言えば、かのパガニーニが“イル・カノーネ”(大砲)を愛用したことでその名が知れわたりましたが、“デル・ジェス”もまた、優れた楽器として高い人気を誇っています。
“デル・ジェス”の名の由来は、父親が作った楽器ジュゼッペ・グァルネリ“フィリップス・アンドレア”と区別するためでした。ちなみに現存する“デル・ジェス”は世界で150ほど。稀少価値は高く、取引価格もストラディヴァリウスよりも高額になる場合があります。