作曲家が生きた場所に身を置く かけがえのない時間

――20年以上生活されているヨーロッパにおいて印象深い経験、また演奏家として思索されてきたことをお伺いしたいです。

福間 パリ国立高等音楽院の学生時代には、フランス人の同級生の若さだけでなく、彼らが作曲家のピアノ・ソロ以外のジャンルや編成の作品もよく聴いて、多角的に勉強していることに感銘を受けました。「先生に言われたことを忠実に」というより、自発的に明確な意思を持って演奏する方が多いですね。

また、作曲家が生きた場所に身を置く時間は、私にとってかけがえのないものです。ショパンが滞在したマヨルカ島の修道院を訪れ、ショパンが歩いた廊下を自分も歩く、そんな経験のあとは、ショパンの作品に対する思いや情熱、そして演奏も変化しています。

アルベニスにハマったときは、「イベリア」に登場する地方を訪ねましたが、その一人旅の記憶は今でも鮮明に残っていて、演奏のインスピレーションの源となっています。

エッフェル塔とセーヌ河岸に程近いパリ日本文化会館にて©船越清佳