――続いて松田さん、「子供のためのリズム遊び」と「ピアノ組曲」についてお話しいただけますか。
松田 ロシアの音楽学校では、音楽を聴きながら絵を描く、音楽とイメージを結びつける授業があったんです。「子供のためのリズム遊び」ではそんなふうに、急に風が吹くような気配を感じたり、想像力を使って聴いていただければと思います。
「ピアノ組曲」は管弦楽版の「日本組曲」を意識して、オーケストラの響きや祭りの雰囲気を再現することを目指しました。個人的には第2曲「七夕」がすごく好きです。日本の七夕の独特の雰囲気、短冊にお願いを書く儀式に込められた人々の思いも、空気の中に舞っているように感じるんです。
――5月26日の「伊福部昭総進撃〜キング伊福部まつりの夕べ~」のコンサートでも演奏されますね。
松田 コンサートでは初めてなので、お客様からエネルギーをいただくとどういう音楽になるのか、とても楽しみです。「子供のためのリズム遊び」は抜粋なのですが、音が少ない曲もあるので、「音の間」を大切にして弾きたいと思います。
――広上さん、七夕の情緒など、現代日本ではどんどん薄れてきているだけに、音楽を通じてそれを想うことは大切かもしれませんね。
広上 今の日本は殺伐として、失ったものが大きすぎるだけに、一石を投じるアルバムになるんじゃないでしょうか。人間が生きていた証が音符の記号の中に入っていて、生きている演奏家が魂をそこへ吹き込むことによって、また生きる。
伊福部さんが今生きていれば110歳。その音楽を40代や20代の若者が弾いてくれる。伊福部さんも、本当に嬉しいと思いますよ。