ミニマル・ミュージックはアメリカの作曲家たちがつくり出したアメリカ特有の音楽スタイルですが、ヨーロッパや日本を含めたその他の地域でも作曲されました。
ヨーロッパのミニマル系作曲家としては、オランダのルイ・アンドリーセン(1939-2021)やエストニアのアルヴォ・ペルト(1935-)が挙げられます。ペルトは古風なスタイルをとるため「中世風ミニマリスト」とも呼ばれています。
日本のミニマル系の作曲家としては、近藤譲、佐藤聡明、平石博一、久石譲、藤枝守などがあげられます。久石譲はアニメの音楽で知られていますが、本来はミニマル・ミュージックの作曲家で、近年、原点に戻るかのように『ミニマリズム』のCDシリーズを発表しています。
久石譲『ミニマリズム』
1980年代頃になると、ミニマル・ミュージックに代わって「ポスト・ミニマル」と呼ばれる音楽が登場し、反復的でありながらも、より柔軟なスタイルをとるようになっていきました。
ジョン・アダムズ(1947-)、ウィリアム・ダックワース(1943-)、ダニエル・レンツ(1942-)、イギリスのマイケル・ナイマン(1944-)などです(ナイマンは、1968年にはじめて「ミニマル・ミュージック」という用語を使ったことでも知られています。)
ミニマル・ミュージックの影響はポピュラー音楽、テクノ系の音楽、ブライアン・イーノの「アンビエント・ミュージック」(※)にも見られ、いまなお大きな広がりを見せています。
※アンビエント・ミュージック…コンサートで意識的に聴かれるのではなくて、日常的な環境(アンビエント)の中で何気なく聴かれる音楽のこと。静かで控えめな表現を特徴とする。イーノの《ミュージック・フォー・エアポート》(1978)は実際にニューヨークのラガーディア空港で流された。
「現代音楽」とセットで語られることの多い「無調」は実在したのか? 「無調」という言葉に作曲家や音楽評論家は何を託そうとしたのか? 古典的な調性システムから離れた音楽は、時間軸をどこに求めたのか?
「調性の崩壊」という言葉でくくられがちな20世紀以降の音楽に本当は何が起こったのか? 音の縦の関係性、すなわちピッチと和声、音階や旋法に関連する問題を中心に、音楽史の再考を迫る画期的な論考。書き下ろし。
「調性がなく、ひたすら難解で、聴くと頭が痛くなる音楽が現代音楽だ」と思い込んでいる人にこそお勧めの一冊。