言葉と音楽による理想のコンサート

船越  私の恩師が「師弟とは上下関係でなく、職人と見習いのように共に歩む〈同志〉」とよくおっしゃっていたのを思い出しました。

聴衆や読者の裾野を広げるためには、演奏家や著者も社会に働きかけていかなければなりません。水林さんはどのような形式の演奏会があればいいと思われますか?

水林  フランス革命以来、基本的人権を擁護することが国家(公共社会)の役割です。それには文化も含まれるはずです。日本ではオペラもコンサートもチケットが高価ですが、経済的な理由でアクセスできない人をなくすよう援助するのも、国家の役割であるはずです。

クラシック音楽の裾野を広げるためには、公的な援助をもとに、演奏家が学校で子どもたちのために演奏し、生の音を聴いてもらうことが必要だと感じます。

僕の作品には、演奏家が当日のプログラムへ込める思い、選曲の理由を聴衆に語りかけるシーンが登場します。こんなコンサートがあればいいなと僕は思っているのです。

船越清佳
船越清佳 ピアニスト・音楽ライター

岡山市出身。京都市立堀川音楽高校卒業後渡仏。リヨン国立高等音楽院卒。長年日本とヨーロッパで演奏活動を行ない、現在は「音楽の友」「ムジカノーヴァ」等に定期的に寄稿。多く...