船越 私の恩師が「師弟とは上下関係でなく、職人と見習いのように共に歩む〈同志〉」とよくおっしゃっていたのを思い出しました。
聴衆や読者の裾野を広げるためには、演奏家や著者も社会に働きかけていかなければなりません。水林さんはどのような形式の演奏会があればいいと思われますか?
水林 フランス革命以来、基本的人権を擁護することが国家(公共社会)の役割です。それには文化も含まれるはずです。日本ではオペラもコンサートもチケットが高価ですが、経済的な理由でアクセスできない人をなくすよう援助するのも、国家の役割であるはずです。
クラシック音楽の裾野を広げるためには、公的な援助をもとに、演奏家が学校で子どもたちのために演奏し、生の音を聴いてもらうことが必要だと感じます。
僕の作品には、演奏家が当日のプログラムへ込める思い、選曲の理由を聴衆に語りかけるシーンが登場します。こんなコンサートがあればいいなと僕は思っているのです。