19. 9月2日にデビュー15周年を記念して、プロコフィエフ、ストラヴィンスキー、ブラームスの協奏曲を1回の演奏会で弾かれます。この3曲の協奏曲を選ばれた理由は?
服部 プロコフィエフの「ヴァイオリン協奏曲第1番」は、思い出深い曲にも挙げましたが、11歳のときに初めて勉強しました。そのときにブロン先生が「プロコフィエフやショスタコーヴィチといったロシアものをこれから弾くにあたり、見せたいものがある」と連れていってくれたのは、ロシアにある戦勝記念公園でした。大きな戦車や本物のカラシニコフが置いてあって、「こういうもので争いをやっていた時代があって、その背景には政治とかいろんなものが絡んでいた。そういう時代をプロコフィエフやショスタコーヴィチは生き抜いてきたんですよ、その重みや痛みを肌で感じてないといけない」って言われて。幼ながらに冷たさを感じました。ほかにもいろんな共演者との思い出はあるんですけど、単純に、最近あんまり弾いてなかったので、弾き直したいなと思いました。
ストラヴィンスキーは今回初めて弾くんですけど、以前からすごく素敵な曲だからいつか弾きたいと思っていました。最初に決めたのがストラヴィンスキーで、あとはどう合わせていくのか考えました。プロコフィエフの1番は、おとぎ話のような、最初から最後まで詩があるような曲です。3楽章のレッスンで、ブロン先生にプーシキンの「冬の夜」っていう詩をロシア語で読み上げられて、明日のレッスンまでにこのロシア語を言えるようになってこいって言われて。ロシア語が全然わからないときだったから、カタカナで発音を書いて、暗記して、次の日のレッスンで言いました。今となっては、先生はこの曲が詩ですよって言いたかったんだと思います。
ストラヴィンスキーは、とても前衛的でモダンな響きだけど、色彩で言ったらカラフルでポップだから、そのニュアンスカラーの対比が出せたらいいなと思いました。全体を通して一つの絵が見えるようにしたくて、このプログラムにしました。
後半ブラームスを入れたのは、せっかくN響と広上さんをお迎えするので、昔からオイストラフの演奏で聴き込んでいた曲を私の15周年として弾かせてもらいたいという純粋な思いで選びました。
20. 一度の演奏会で協奏曲を3曲演奏するうえでいちばん大変なことは?
服部 体力ですね。体力が削られてきちゃうとパフォーマンスに影響が出ますし、細かいところまでのカラーリングって、元気のあるときでないと体がうまく動いてくれなかったりするんです。そうすると、曲の色の配置が曖昧になったり、形がちょっとヨレたりするので、それを徹底的に変えたいなら徹底的に体力つけておかなきゃと思います。これもまたチャレンジですね。
——聴かせどころや注目してほしいところは?
服部 前半はプロコフィエフとストラヴィンスキーの対比をちょっと俯瞰して楽しんでもらいたいです。楽曲の世界観の比較みたいな。並列したときにどういう違いがあって、どういう印象を受けるか、総合的な目線で捉えてもらえると、面白いかなと思います。
あとは純粋にN響がとても鋭敏な音で素晴らしく奏でてくださると思うので、とくにストラヴィンスキーをN響とできるのをいちばん楽しみにしています。音の爆発がいろんなところであると思うので、全身で何か感じていただけたらと思います。
日時: 2025年9月2日(火)19:00開演
会場: サントリーホール 大ホール
出演: 広上淳一(指揮)、服部百音(ヴァイオリン)
曲目: プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 作品19、ストラヴィンスキー/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調、ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
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