ベートーヴェンにとって人生は劇場だったかもしれない

そして興味深いのは、次の仲道のひと言。

仲道「ベートーヴェンが亡くなる時に『喜劇は終わった』と呟いたそうですが、ベートーヴェンにとって生きるということ、音楽を書くということは、もしかしたら人生をもある種『劇』のようなものと、俯瞰した目で捉えていたのかもしれないとも想像します」

ベートーヴェンがシェイクスピアに傾倒していたのは事実で、劇音楽もゲーテ作の『エグモント』、古代ローマの英雄をテーマにした『コリオラン』への序曲など、多くの例が見つかる。

ピアノ・ソナタの中にも新たな光を投げかける仲道。長い道のりを歩む旅人としての彼女の視線の先には、新しい世界への入り口が見えているのかもしれない。

公演情報
The Road to 2027 仲道郁代 ピアノ・リサイタル 劇場の世界

日時:2023年6月3日(土)14:00

会場:サントリーホール

曲目

べートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第19番 Op. 49-1

べートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第20番 Op. 49-2

べートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第18番 Op. 31-3

シューマン:パピヨン Op. 2

シューマン:謝肉祭 Op. 9

問合せ:ジャパン・アーツぴあ 0570-00-1212

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片桐卓也
片桐卓也 音楽ライター

1956年福島県福島市生まれ。早稲田大学卒業。在学中からフリーランスの編集者&ライターとして仕事を始める。1990年頃からクラシック音楽の取材に関わり、以後「音楽の友...