音楽が流れて奏者と共有できて会場が一体となる瞬間がいちばん幸せ

16. 衣裳へのこだわりは?

沖澤 よく着ている衣装は、腕を上げたときに肩が上がらないように、脇のところをダンサーさんの衣装に使うような伸縮性がある素材で作ってもらいました。普通のジャケットだと、指揮で腕を上げると一緒に肩も上がってしまうので。

あと、今せっかく京都に来ているので、京都らしさを出せたらと思い、京都懐紙専門店の辻徳さんで蝶ネクタイとカフスと髪のバレッタを作ってもらっています。海外でも京都の文化を少しでも身につけられたらいいなと思って。産休後の3月に定期で復帰するので、そのときにお披露目できると思います。

——素敵ですね。楽しみにしています。ドレスで指揮台に立たれる方もいらっしゃいますね。

沖澤 ドレスもいいと思います。私は立つときにけっこう足を開くので、ドレスはそういう設定じゃないのと、あとはやっぱり指揮台に乗るときに気になるかな。それから奏者から邪魔にならないことが大事ですね。キラキラしたり白だったりすると棒が見えなかったりするので。リハーサルのときも大体暗い色で柄がないものを着るようにはしてるんです。

でも、男装してるように見られるのも違うかなと思っています。指揮者がもともと男性の職業だからタキシードを真似してるっていう意味ではなくて、正装らしくて、奏者の邪魔にならない、いい意味で気にならないことを意識しています。

京都懐紙専門店の辻徳さんのバレッタ
©京都市交響楽団

17. これまでいちばん緊張したことは?

沖澤 最初に受けた東京国際コンクールの指揮部門です。優勝したときではなくて、その6年前にも受けていて、 初めて受けたコンクールでした。いちばん緊張して、もうほとんど記憶にないです(笑)。

18. 指揮者になって一番幸せを感じるのは?

沖澤 やっぱり演奏中ですね。いろんなことがあっても、音楽がすごく流れて、奏者とその音楽を共有できている。お客さんもそうだし、会場が一体となる瞬間に1番幸せを感じます。

リハーサルはけっこう大変だし、精神力も体力もめちゃくちゃ使います。オペラはその期間も長いし、それが一緒に山を登った感じというか。そういう瞬間が幸せです。

公演情報
京都市交響楽団 第698回定期演奏会 京響共同委嘱作品日本初演と交響詩《英雄の生涯》

日時: 2025年3月14日(金)19:30開演 フライデー・ナイト・スペシャル

会場: 京都コンサートホール・大ホール

出演: 沖澤のどか(指揮)

曲目: 陳 銀淑(チン・ウンスク)/スビト・コン・フォルツァ (Subito con forza)、R.シュトラウス/交響詩《英雄の生涯》作品40

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日時: 2025年3月15日(土) 14:30開演

会場: 京都コンサートホール・大ホール

出演: 沖澤のどか(指揮)、金川 真弓(ヴァイオリン)、クレア・チェイス(フルート)

曲目: 藤倉 大/ヴァイオリンとフルートのための二重協奏曲(日本初演)、

R.シュトラウス/交響詩《英雄の生涯》作品40

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三木鞠花
三木鞠花 編集者・ライター

フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...