もはやピアノYouTuberの一言では括れない新ジャンルを作り出したエンターティナーとして、まなまるについても触れたい。

彼女は2016年からSHOWROOMで毎日生配信を行ない話題を集めたが、ピアノの即興だけでなく、歌やモノマネ、腹話術、書道に絵など、多彩な才能を披露している。

中でも人気アニメソングやポップスの演奏と同時に、クレヨンしんちゃんやドラえもん、ポケモンといった多数のキャラクターのハイクオリティなモノマネをしながら歌う動画は圧巻。彼女の映像はピアノを通じて人を笑顔にしたいという思いに溢れており、子どものファンが多いというのも納得だ。

クレヨンしんちゃんのモノマネをしながら歌い、ピアノを演奏するまなまる。モノマネのクオリティの高さにも驚く

男性サラリーマン2人によるユニット・ベントーベンは、プレイヤータイプのピアノYouTuberとは異なり、主に楽曲分析を行なっている。

人気の「初見ピアノシリーズ」では、難易度の高いポップスを鍵盤奏者の「ベン」が、動画撮影当日に初めて聴いてワンフレーズごとに耳コピをしながらコード分析をするというもの。

この動画の見所は、ベンの”絶対音感”にあり、どのような複雑な展開の楽曲もほぼ一聴してコード感をつかむことができるのが痛快だ。また、視聴者は彼らと同じように少しずつ曲の全貌を掴んでいけるというのが、なんとも臨場感があって面白い。最近では米津玄師《KICK BACK》、YOASOBI《アイドル》の分析などが個人的にヒット動画だった。

ベントーベンの「初見ピアノシリーズ」から、YOASOBI《アイドル》の分析。一聴してコード感をつかむ様子が見ていて痛快だ

こうしてピアノYouTuberの今を一望してみると、ストリートピアノにしても楽曲分析にしても、ピアノという鍵盤楽器を使っていかに観る人聴く人を楽しませるか、その一点にかけるプロのこだわりを随所に見た気がした。

「うまいピアノを披露する」だけが重要ではない、エンターテインメント性溢れるピアノYouTuberに、今後も注目したい。

NIEDA IKU
NIEDA IKU

編集、ライター、A&Rなど。神奈川県生まれ。音楽大学でピアノを専攻し、レコード会社に就職。その後出産を機にフリーランスに。好きな音楽は雑多でジャンルを問わず聴...