
——ポーランドの音楽家としての感情やアイデンティティは、ショパン解釈にどのような影響を与えていますか?
パヴラク 3つほど、ポーランド人のほうがショパンの音楽の一部を理解しやすい点があると思います。外国の方が理解できないという意味ではなく、もちろん外国の方でもとてもよく理解しうるのですが、ポーランド人にとっては子どもの頃から馴染みがあって「直感的にわかる」部分がある、という意味です。
1つ目は、ショパンの音楽に出てくる舞曲です。例えば、ほとんどのポーランド人は高校の卒業式でポロネーズを踊る伝統があります。だから、音楽に向き合うときに、テンポやリズムを体で知っているわけです。
マズル、オベレク、クラコヴィアクのようなほかの舞曲は、現代ではあまり踊られないので、それほど詳しくはありませんが、テレビや舞台などで見る機会はあり、子どもの頃から耳にしています。だからマズルカに向き合うときも、直感的にわかる部分があると思います。
パヴラク 2つ目はメロディの作り方です。作曲家がどのようにメロディを作るかは、しばしば言語に影響されます。特にマズルカではそれが顕著です。マズルカは元々、人々が歌ったり踊ったりしたものが基になっていて、歌詞をつけて歌われることもありました。ですから、メロディはその言葉に合うように作られています。
ショパンのマズルカを聴くと、ポーランド語のアクセントの置き方に合っていることが多いんです。例えば、ポーランド語は「語尾から2番目の音節」にアクセントがあるので、終わり方が2音になるフレーズが多かったりします。私の母国語もポーランド語で、もっとも自然なコミュニケーション手段として使っているので、演奏するときにも無意識に自然になるようにしていると思います。
ショパンコンクール第3ステージでのマズルカの演奏
パヴラク 3つ目は、ポーランドの文化をよりよく理解していることです。幼少期からポーランドの歴史を学び、蜂起や戦争についてなどよく知っています。もちろん実際に経験したわけではありませんし、二度とそうしたことが起きてほしくないと思っていますが、学校の授業や映像などを通して、想像することはできます。ショパンが祖国の蜂起の知らせを聞いたとき、どんな気持ちだったのか。自由な国で生まれなかったことをどう思っていたのか。
そして私たちの親世代もまた、自由な国に生まれたわけではなく、共産主義政権下に生まれ育ちました。そのため、ショパンの音楽にある非常に複雑な感情を、私たちは少し理解しやすいと言えるでしょう。
——ショパンとの長い旅のあと、今いちばん弾きたい作曲家は?
パヴラク 次に学びたいのは、ラフマニノフのソナタです。どれくらい時間が必要か考えているところですが、来年のリサイタルで取り上げたいと思っています。
今はリストのソナタもよく演奏しています。3年くらい前に学んだのですが、最近またレパートリーに戻しました。
ショパンコンクールのあとは、他の作曲家も演奏したいと思ったので、全曲ショパンというリサイタルでない限り、いつも半分はショパン、半分は別の作曲家を弾いています。