《わが祖国》おすすめの名盤4選

■ヴァーツラフ・ターリヒ指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(1939年ライブ録音)

1929年から1941年までチェコ・フィルの首席指揮者だったターリヒには、4つの《わが祖国》の録音が残っている。特に、1939年6月、ボヘミアとモラヴィアがドイツの保護領となって3か月後のライヴ録音は壮絶な演奏として知られる。「ターボル」と「ブラニーク」が演奏禁止(わずかな例外を除いて)となるのは1940年のことだ。

■ヴァーツラフ・ターリヒ指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(1954年録音)

ドイツ協力の疑いをかけられたり、チェコ・フィルとの活動を禁じられたり、それならと自ら創設した室内管弦楽団も解散を命じられるなど、戦後のターリヒは不遇だった。1954年、彼がようやくチェコ・フィルの指揮台への復帰を許されて録音したこの演奏は、《わが祖国》の最高の名演のひとつとして知られている。ターリヒとチェコ・フィルの共演は、この後、わずかなスタジオ録音があるのみだ。

■ラファエル・クーベリック指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

1941年、ターリヒの後任としてチェコ・フィルの首席指揮者に就任したクーベリックだったが、戦後、チェコが共産化すると西側に亡命し、アメリカや西ドイツなどで活動し、1986年に引退した。しかし89年、チェコスロバキアの民主化が実現すると、42年振りにチェコ・フィルの指揮台に復帰、渾身の《わが祖国》を聞かせた。

■ヴァーツラフ・ルクス指揮 コレギウム1704

「コレギウム1704」は、ふだんはゼレンカやバッハといったバロック時代の音楽を中心に演奏しているチェコの古楽アンサンブル。彼らの《わが祖国》は、精緻なアンサンブルと澄んだ音色、そして大胆な表現によって、今まで見えなかったこまやかな表情が見えてくる、現代を代表する名演だ。

増田良介
増田良介 音楽評論家

ショスタコーヴィチをはじめとするロシア・ソ連音楽、マーラーなどの後期ロマン派音楽を中心に、『レコード芸術』『CDジャーナル』『音楽現代』誌、京都市交響楽団などの演奏会...