手順は編成によって異なる!

——絵柄を考えるのと作曲するのは、どちらを先にしているのですか?

オックスマン 編成によります。ソロからオーケストラまで、さまざまな編成で作曲しますが、編成がある程度大きいアンサンブルのときには作曲する前に絵のスケッチをして、音符を必要な場所に配置します。クラリネット五重奏だったり弦楽四重奏だったりするわけですが、それぞれの楽器の音域がわかっているので、音符をその範囲内に収めます。クラリネットの最高音やヴァイオリンの最低音に合わせて配置できる範囲が決まってくるわけです。音域内に収める以外は、スケッチに基づいて音符を配置して、弾きながら音符を上げたり下げたりして、きちんとした音楽作品に仕上げます。

Sympawny no.5 (Jefferson)

オックスマン シルエットの作品は、音符が密集していて動かせる範囲が狭いので、絵を描くのと作曲を並行して進めます。1小節ごとに1音1音ゆっくり考えて、絵を描き終えるのと同時に作曲も完成します。

ピアノ・ソロ曲のときにもこの方法で仕上げます。音符をランダムに配置してもある程度は音楽的に聴こえますが、ピアノという楽器はとても複雑で、ピアノにとって理想的なテクスチャーがあるので、絵を描いてから音楽を整えようとすると非常に難しいです。特に長い作品は、シルエットの肖像画と同じように、1小節ずつゆっくり絵と音符を考えていくほうが作りやすいです。

シルエットの作品例:Violin Pawlude no.1 (Finn)

——手書きですか?

オックスマン デジタルで描いています。でも今年、手書きにも挑戦し始めました。

——手書きのほうが難しいんですか?

オックスマン 一番難しいのは作曲で、この過程をパソコンで終えてから手で描くので、時間はかかるけれどそんなに難しいわけではありません。作曲中には書いたり消したり、何度もトライアンドエラーを繰り返すので、デジタルで曲を仕上げてから手書きにしています。

——音楽面のバックグラウンドを教えてください。

オックスマン 幼い頃から音程やハーモニーに興味があり、音楽を耳にするといつも音程やハーモニーを理解しようとしていました。11〜12歳のときに、まだ音楽理論を勉強し始める前でしたが、頭の中にメロディが浮かんできて、ピアノの前に座ってそのメロディに合う和音を探したのを覚えています。6歳から約7年間ハーモニカを吹いていましたが、メロディだけでは満足できないことに気付き、ピアノを始めました。ピアノを弾くことで、まったく新しいハーモニーの世界が開けて、より作曲に興味をもつようになりました。ピアノの先生がどうやってパソコンで作曲するのか手ほどきをしてくださり、高校を卒業する頃には「トランペットとピアノのためのソナチネ」やジャズ風のワルツなど、いくつかオリジナルの作品を作曲していました。

アナグマやヘビまであらゆる動物に対応

——ホームページから依頼できるとのことですが、どんな動物でもお願いできるのですか?

オックスマン はい、どんな動物でも描きますよ。ただし、人間以外!(笑) 動物が大好きなんだけど、人間にはあまりインスパイアされないんです。動物ならなんでも、例えばアナグマや馬、ロバ、牛、ヘビ、うさぎなども描いたことがあります。

Brass Equintet (Quilona Z)

——これまでで1番印象に残っている依頼は?

オックスマン ペットとしてメジャーな犬や猫の依頼が多いので、珍しい動物の依頼があると嬉しいです。でも、もちろんどの動物のときにも、すべての音に心を込めて作曲します。音楽に気持ちを乗せるのは大事なことですから。

特に印象に残っているのは、ゴールデンレトリバーを描いたソロピアノ曲です。作曲の過程すべてにおいて強烈にインスパイアされて、とても特別な曲になりました。

Pawntasy in Eb for pawiano

根底にあるのは動物への愛! 動物保護の取り組み

——売り上げの一部を動物たちのために寄付しているそうですね。

オックスマン 9年以上にわたり、妻と一緒に近所の野良猫のお世話をしています。100匹ほどの猫に毎日45分かけて餌をあげて、健康状態をチェックして、怪我や病気を見つけたら獣医に連れていきます。例えば今週は1匹、足に怪我をしていて3週間ゲージに入れておく必要のある子がいました。この活動を続けるにはお金がかかり、自分の収入から支払っているので、ホームページに「料金の少なくとも20%は猫の保護のために使用します」と記載しています。

オックスマンさんと3匹の愛猫

オックスマン また、スペインの動物保護団体と資金集めをしたこともあります。闘牛に対する保護の呼びかけだったので、牛を作曲しました。200ユーロほど集まり、寄付しました。これからもっと動物保護のための資金を集めるプロジェクトを企画したいと思っています。

Paso Dobulle for 4 trumpets – Year of the Ox

——これから挑戦したいことはありますか?

オックスマン はい、同じ場所に留まるのではなくて、前に進んで新しくワクワクすることや面白いことをしていきたいです。このタイプの作品を作り続けて、今ではルーティンのようになっているので、何か新しいことに挑戦したいと思っています。手書きに挑戦したのもそうですし、最近では依頼ではないオリジナルの作品を完成させました。すべて手書きでトラを描いて、初めて作品を販売しようとしています。YouTubeに投稿する動画なども、いろいろ企画していきたいです。

三木鞠花
三木鞠花 編集者・ライター

フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...