コロナ禍で見つけた東響という“居場所”

——東京交響楽団に入団されたときは、芸大別科に在籍中だったそうですね。最初からオーケストラを目指していたのですか?

内山 2020年の春にコロナ禍に入ってしまって。本来なら、大学を出てからオーケストラのエキストラに呼んでもらって経験を積みながら就職を目指す、という流れがあると思うのですが、公演が次々と中止になり、その道が絶たれてしまいました。

芸大の別科に進んだのも、当時はやることがなくなってしまい、「今のうちに学べることがあるかもしれない」と思ったのが理由でした。

——そうだったのですね。東響のオーディションは、最初から狙っていたのですか。

内山 オーケストラへの強い憧れがあったというより、「何かやることを見つけなきゃ」という気持ちのほうが強かったと思います。そんなとき、たまたま東響のオーディション情報を見かけて、応募しました。

——実際に入団してみて、どんな印象でしたか。

内山 最初は自分にとってはこれが「普通」だと思っていましたが、後々「東響はすごくアットホームな場所なのだな」と気づきました。

初めて社会に出て、初めてプロのオーケストラに入ったのに、変に緊張することもなく、自然となじめていたんですよね。それって実はすごくありがたいことだったのだと、今は実感しています。

——アットホームだと感じる具体的な場面は。

内山 楽員同士のコミュニケーションが活発です。とにかくよく話しかけてくれるし、話題も尽きない。ゲームやスポーツ、料理など、みんな多趣味で、それぞれに共通の話題があって、どの人とも何かしら盛り上がれるんです。居心地がいいし、飽きない職場だなと思っています。

——世代やキャリアの異なる奏者と演奏するなかで、気づいたことはありますか。

内山 学びばかりです。なかでも一番強く感じたのは、学生時代にやってきたことが、ちゃんと今につながっているということです。

たとえば室内楽で培ったアンサンブル能力は、そのままオーケストラにも活きてくる。人数が増えただけで、求められる感覚やアンテナの種類は、実はそんなに変わらないと気づきました。オーケストラだからといって特別なことをやろうとする必要はなく、自分の中にあるものを応用すればいい。そう思えるようになったのは大きかったですね。