第2部は「International Standard」。バンドをバックにジャズや昭和歌謡が歌われ、辻、山本との軽妙なトーク、そして照明も華を添えた。「RIO’s bar」と称し、辻がバーのマスター役、上原がオーナー役でコンサートが進行。《Fly me to the moon》、さらに《勝手にしやがれ》に《あの鐘を鳴らすのはあなた》が続いた。クラシックとは発声を変えながら、色気たっぷりの声をマイクに乗せ歌唱。《イヨマンテの夜》で力強く幕を閉じた。
第3部は「Orchestral Stage」。辻の指揮、山本のピアノとともにオーケストラを従え、ミュージカルや映画音楽が歌われた。ミュージカルからは『チェス』の《アンセム》、『ジキル&ハイド』から《時が来た》、そして『レ・ミゼラブル』の《星よ》。上原にとって重要なレパートリーだ。役柄ごとに表情、立ち居振る舞い、すべてが変化し、完全に役柄になりきっての歌唱は客席を一瞬でそれぞれの世界観へと引き込んでいった。映画音楽からは『The Love Story~ある愛の詩~』、『セント・オブ・ウーマン』より《Por una cabeza(首の差で)》、『ニュー・シネマ・パラダイス』の《愛のテーマ》、『ゴッドファーザー』の《愛のテーマ》。立体感のある言葉の粒立ちが美しく、楽曲の世界観を鮮やかに伝える歌唱を聴かせてくれた。特にこのステージでは山本の編曲も重要な役割を果たしており、上原の声に見事に寄り添い、盛り上げる楽曲が生み出されていた。もちろんそれは辻の指揮とオーケストラの演奏もあってこそ光る魅力であった。
RIOのイニシャルから始まる3部構成で、幅広いプログラムを歌いこなした上原。アンコールの《また逢う日まで》に至るまで、声は輝かしさと力強さ、繊細さに満ちていた。これは彼の声そのものの強さ、歌唱センスというのもあるだろうが、今回の公演でクラシックステージを聴き、あらためて、彼の歌唱の土台となっているクラシックの発声とテクニック、表現の充実があるからこそだと実感した。これほど自在に、そして魅力的にジャンルを横断できる歌手は稀有な存在だ。上原理生という声楽家はきっとこれからあらゆる音楽の“架け橋”として活躍し続けていくことだろう。