中山美紀(以下、中山) 私は、2017年のアントネッロとラ・フォンテヴェルデのモンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」(通称ヴェスプロ)の時に初めて濱田先生とご一緒させていただいて、それが本当にすごくて。聴いたことのある曲が全然違っていたんです。
そのとき、私は大学院を出たばかりだったので、何が起きているのかまだわからなくて。でも、とにかく感動するし、先生の音楽はなんでこんなに興奮するんだろうって、終わった後も1年間ぐらいずっと考えて引きずっていました。
2019年の「オルフェオ物語」(レオナルド・ダ・ヴィンチが手がけた音楽劇の蘇演)で、またお声がけいただいて以来、音楽の秘密のような部分を奏者として色々と学びながら、一緒にやってきました。
先生はほんとうに途方もない準備をされるんです。「メサイア」も「マタイ受難曲」も、既存の楽譜ではなくて、全部楽譜を一から打ち込んで作り直される。全部のフレーズのアイデアを膨らませて、何もかも自分のものにした状態でスタートされる。
とんでもない勉強量と、絶対にかなわない演奏力があるから、みんながついていくのだと思います。その圧倒的なところに毎回驚きますし、1個1個のフレーズも、一つ音が上がるだけでも、アイデアが無限に現れて迷いがないんです。