――歌い方やフレーズをどうするかという問題ですが、それは濱田さんがリコーダーやコルネット、つまり管楽器の奏者でもあることが、大きな一つのファクターになっているのではないでしょうか。
たいていの指揮者は、鍵盤楽器か弦楽器出身の方だと思います。管楽器出身の指揮者は、古楽系だとブリュッヘンやミンコフスキあたりでしょうか。管楽器から出てきたことで、音楽に有効に働く何かがあるのでしょうか?
濱田 メリットはあると思いますが、もちろん鍵盤楽器出身ではないデメリットもきっとたくさんあると思います。管楽器は、やはり歌に近い楽器なので、メロディメイキングというところで少しは……。
――弦楽器も歌いますけれど、管楽器だと呼吸そのものが歌になりますよね?
濱田 それは大きいと思います。でも弦楽器の方がテクニックがすごいから、歌を超越する瞬間がたくさんありますよね。
中山 やはり管楽器なので、とても歌わせてくれるといいますか……。放物線状に、生まれて盛り上がって終わるのではなくて、最後まで歌わせてくださる。それは歌い手としても凄くやりやすいです。
どのフレーズも自分が感動するまで消化してからやりなさいと、いつも仰います。先生の著書にも書かれていますが、盛り上がって死ぬけれど、最後に歌心が花開く、みたいなイメージですね。
――濱田さんが笛を吹いた後に譜面台に置いて、また指揮に戻る。そのときの濱田さんの身体性もすごく面白いなと思うんです。かっちりとした指揮ではなくて、曲線的な、独特のウェーブ感というか、ノリがありますよね。アントネッロの演奏を聴くと、もしかしたら古楽ってラテンミュージックの一種なのかなと思えてくるんです。
濱田 確かにバロック以前の音楽は、クラシックの先祖というよりはラテン歌謡の先祖と言った方が当たっているくらい、メロディが似ていますよね。もし、ラテン歌謡の音大があって、古楽科があったらそれがいちばんいい。(笑)
――ジャズっぽいと言う人もいますね。
濱田 そういうリズムの取り方のほうが本来だと、僕は思っています。「従来の枠に収まらない」とか言われますが、こういう方が王道だと思っているんです。