――サントリー音楽賞受賞記念コンサートの「リナルド」(8月17日)は、ヘンデルがロンドンで最初に成功した、いわゆる“魔法オペラ”と呼ばれるジャンルの傑作ですね。アントネッロがいよいよサントリーホールでオペラを上演しますね。
中山 今まではお姫様みたいな感じの役が多かったのが、今回、魔女というキャラが濃い役になります。魔女というと皆さんは、黒いとんがり帽子をかぶって鼻がまがっているというような想像をされるかもしれないですが、ちょっと違っていて。
聖書の言葉を信じている十字軍の人たちとは違って、たとえば天気や自然、そういう人間ではない世界から力をもらって、それを活力としている女性だと思うのです。
そういうのって共感できますよね。たとえばお天気がいい日に富士山を見て、なにかいいことがありそうと思ったり、占いを信じたり。
今回のアルミーダ役も、ほうきを持って魔法を使ったりして、すごくわかりやすい魔女像になるとは思いますが、例えば1幕のアリアだったら、雷が鳴って、ヘンデルの音楽に力をもらって歌う、そういう場面もすごく楽しみです。
濱田先生は各キャストにいつも通り当て書きで、装飾を書いてくださっています。どこがヘンデルの作曲で、どこが濱田先生の作曲なのかと思うくらい、ふんだんに装飾があるカデンツァのような感じなので、そこも聴きどころだと思います。
彌勒 自分としてはカウンターテナーが4人も出るというのが、もうめちゃくちゃ面白くて。しかも、ゴッフレードという十字軍の大将と、その弟のエウスタツィオと、私が歌う騎士リナルドの仲良し3人組で動くことが多い。
その並んだ男3人がいきなり、通常の男性の1オクターヴ高いところから声を出してくる。やっぱり高音ヴォーカリストって、ポップスの世界でも格好いいじゃないですか。「髭男」(Official髭男dism)だって、平井堅だってそうです。だからそれを突き詰めたのがカウンターテナーだと僕は思っています。
4人も出ると、その日は全国的にカウンターテナー不足になるくらい集結してるので、カウンターテナーが好きな方はぜひサントリーホールへ。(笑)
濱田 同じヘンデルでも前回の「ジューリオ・チェーザレ」は一人ひとりのアリアに重点を置いて、他の歌手との絡みを割と少なくしたのですが、今度はちょっと絡みがあります。
全体的にバロック・オペラは多かれ少なかれオペラ・ブッファ*だと思っているので、今回もわりとコメディタッチのものになります。面白い歌詞もたくさんあるし、他の作品からの挿入曲もあります。
とにかくヘンデルは、もう作曲は完璧なんです。驚くべきことですよ。
*オペラ・ブッファ:18世紀から19世紀前半期に作られた喜劇的イタリア・オペラの総称
――最近のアントネッロは、ヘンデルやバッハなど後期バロックにまでレパートリーが来ていますよね。もしかして今後は、もう少し時代が後のほうにいく可能性もあるのでしょうか。
濱田 おっしゃる通りです。モーツァルトぐらいはできればやりたいですね。
日時:2024年8月17日(土) 16:00開演
*上演予定時間 約3時間50分(休憩2回)
会場:サントリーホール 大ホール
キャスト・スタッフ
指揮・リコーダー:濱田芳通
リナルド:彌勒忠史(カウンターテナー)
アルミレーナ:中川詩歩(ソプラノ)
ゴッフレード:中嶋俊晴(カウンターテナー)
アルミーダ: 中山美紀(ソプラノ)
エウスタツィオ:新田壮人(カウンターテナー)
アルガンテ:黒田祐貴(バリトン)
魔法使い/ドンナ:眞弓創一(カウンターテナー)
伝令/セイレーン1:中嶋克彦(テノール)
セイレーン2:山際きみ佳(メゾ・ソプラノ)
舞踊:西川一右
管弦楽:アントネッロ
演出:中村敬一
曲目:ヘンデル:オペ《リナルド》 HWV 7a [全3幕/イタリア語上演・日本語字幕付]
料金:S席12,000 A席10,000 B席8,000 U25席3,000
詳細はこちら