林田 今回のコンサートのもう一つの注目点は、ピアノ協奏曲2曲がメインだということです。オーケストラ公演って、いつも後半にシンフォニーを置きますが、ピアノ協奏曲がメインであるコンサートもあったほうが面白いと思うんです。その辺の大きな問いかけにもなっているんじゃないでしょうか。
河村 チェコでの演奏会で、ブラームスの協奏曲の1番を弾いたことがあるんですが、そこではシベリウスのシンフォニーを前半に持ってきて、ブラームスの協奏曲が後半でした。これまで慣れているコンサートのやり方をちょっと変えることも……
山田 あっていいと思います。日本では少ないのかな? 世界的にはよくあるんじゃないですか。とくにブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」や「第2番」のように最後を引き締められるような曲はそうですね。
今回は尚子さんのお祝いの演奏会ですし、それを読響がサポートできて、みんな気合が入りますよ。いちばん気合が入っているのは私ですが(笑)。
山田 尚子さんとは仲はいいけど、共演回数はそんなに多くない。バーミンガムのツアーで1回やって、あとはN響での矢代秋雄のコンチェルトの2回しかない。
河村 山田さんは音楽性がずば抜けているので、どんな曲でもオーケストラもピアノも引き立たせるし、場の雰囲気もいつもいいと思うんですよね。信頼関係がとても充実しているんです。
最初の出会いからすごく偶然だったんですが、私がモスクワに着いた日に山田さんがフランスのオーケストラとのロシア・ツアーでチャイコフスキーホールでコンサートがあって、それを聴きに行ったのが最初の出会いです。その後も、いろんなところで偶然に会って、「ああまた会えたね」ってごはん食べたり話したりして。
山田 偶然が3回あったね。その次がケルンで、そのまた次がスイスの田舎で。
林田 そういう素敵な偶然が続いたというところからして、お二人の化学反応が始まっているわけですね。
河村 音楽をする前に人間を知ったという感じです。
山田 林田さんは化学反応っておっしゃったけど、僕としてはもうちょっと先に、前世か来世では多分一緒だったかもくらいの気持ちですよ。もちろん尚子さんがいろんな人に好かれてるのはわかってるけど、ジェラシーじゃないけど、それをかきわけて、尚子さんがサントリー音楽賞をとったとき、「僕がやるから」って電話したんですよね?
河村 はい(笑)。
山田 他の人にとられたくないですから(笑)。