古田新太流、演じるポリシー

——スクリーンやテレビのこちら側にいる人間からすると、「古田新太」という俳優はかなりアヴァンギャルドでパンクなイメージで、先ほどおっしゃったベートーヴェン像と重なるんですが、ご自身とベートーヴェンとの共通点はあると思われますか。

古田 いや、それはないです。おいらはどの現場に行っても監督や演出家に言われた通りにやるから。アドリブとかはやらない。言われた通りに演じられるように準備をするのが役者の仕事です。

今回シンドラーを演じたや~まだ(山田裕貴)なんかは信じる力が強くて、でも役によって心の方向を変えることができるから、いろいろな役ができる。頑なな俳優は何やったって同じになっちゃう。例えば舞台やりながら映画やってテレビやって、ということは普通にありますから、カットがかかったらすぐその役が抜けていかないとダメ。それができない人は役者じゃない。

——それは俳優を始められた最初からできたんでしょうか。

古田 クラシック・バレエをやっていたときに「ロットバルトの手下」っていう役を演じたんです。しかもそのあと、宮廷のシーンでボーイをやらなくちゃいけなくて、それで「役が抜けない」とか言ってられないじゃないですか(笑)。

それからアングラ演劇や小劇場に行って、そこでは馬やムカデなんかも演じて。そうした板の上の世界から映像の世界に入ったから、カットがかかったらフレームから外れてすぐに素に戻ることは当たり前なんです。