——古田さんとベートーヴェンの音楽との出会いはいつ頃、どんな形だったのでしょうか。
古田 小学校の音楽の授業だと思います。ほかの作曲家の曲に比べていい意味で「うるさい」音楽だなあ、と。ストリングスにしても「ガンガン弾く」ような激しさがあり、例えばそれまでのモーツァルトなんかのオーケストラ曲とはずいぶん違う。「こんな激しくていいんだ」と思ったのを覚えています。
その後バレエを習い始めてチャイコフスキーとかヨハン・シュトラウスなんかに親しみましたが、彼らともまた違う。やっぱりベートーヴェンはカッコイイと思いますね。
——どんな曲にいちばんカッコよさを感じますか。
古田 やっぱり「運命」はすごかった。でも、ピアノ・ソナタ「月光」を聴いたときには、こんな静かで穏やかな曲も作るんだ、って思いました。静かな曲から激しい曲まで、そのギャップがすごい。そのとき自分が面白いと思うものを作っちゃう。そこにベートーヴェンの人間性が表れてると思います。そういうところが、面白がれる人間にはたまらないんじゃないかな。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番《月光》
——この映画は、そういうベートーヴェンの人間的な魅力を見せてくれているように思います。
古田 音楽って音を楽しむものなんだから、マジメにとらえすぎる必要はないと思うんですよ。ジャズのように楽しんでもいいし、「シューベルトの髪型おかしい」ってとこから入っても全然いい(笑)。このヘンな髪型のおじさんが作った音楽ってどんなの? っていう興味から聴き始めていいんです。
だからこの映画が、音楽室の壁に貼ってある鹿爪らしい顔した「楽聖」というベートーヴェンのイメージを壊して、実はこんなにパンクでカッコいいんだよ、ということを伝える一歩になればいいと思っています。
映画の中にはたくさんベートーヴェンの曲が出てくるので、大人のクラシックファンの方にも観てほしいですし、普段クラシックを聴かない中高生の人たちにも「聴いたことあるけどこれってベートーヴェンだったんだ」という発見があると思うので、ぜひ観にきてほしいです。
公開日: 2025年9月12日(金)全国公開
出演: 山田裕貴、古田新太、染谷将太、神尾楓珠、前田旺志郎、小澤征悦、生瀬勝久、小手伸也、野間口徹、遠藤憲一
原作: かげはら史帆『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』(河出文庫刊)
脚本: バカリズム
監督: 関和亮