——政治情勢が変化し、コンクール連盟には考えるべき問題が多くありそうです。冷戦後数十年、国際政治とコンクールの問題は忘れかけられていたところに、また出場者の出身国などが気にされる状況になってしまいました。
K そうですね。ご存知のようにコンクール連盟はチャイコフスキー・コンクールを除名しました。しかし我々はチャイコフスキー・コンクールやロシア音楽、ましてやロシア人演奏家を否定するわけではありません。私自身、モスクワ音楽院で学んだ身です。我々が主張するのは、このコンクールがプロパガンダとして利用されている限り、若者に参加は推奨できないということです。
ただ今回の出来事で、コンクール連盟は、これまで音楽家を国籍でくくって見ていた前提を省みる機会を得ました。どんな困難も、それにより前向きな学びや反省が得られるわけで、今回もその意味でプラスに捉えたいと思っています*。
*ブゾーニ・コンクールでは、出場者の出身国ではなく、出生地/教育を受けた地/現在の居住地を紹介している
——ブゾーニ・コンクールでは、最初のソロでブゾーニの作品が必須となっています。作品の魅力は?
ブゾーニは、グランドピアノから抽出できる倍音や雰囲気を熟知していました。
ピアニスティックに書かれ、現代の作品でありながら調性があるので、ピアノの美しい響きを楽しめます。作品を知っていただく良い機会になるでしょう。