シャネル・ピグマリオン・デイズを通して成長していく“人間力”

 ——演奏者の選定基準、歴代のアーティストに共通する点はありますか?

音楽家の方たちを選ばせていただく際には、一般的なオーディションという形式は取っておらず、書類選考を通過した応募者の方々と実際にお会いし、本プログラムで挑戦したいことや将来どのような演奏活動を行なっていきたいかなどをお聞きしながら、ご縁を大切にしております。演奏技術だけでなく、このプログラムを通してアーティストとしてさらなる成長を期待できる“人間力”にも注目して、選考させていただいています。

ピグマリオン・デイズへの参加応募は、シャネル・ネクサス・ホールのウェブサイトでも行なっており、毎年100名近くの方々よりご応募いただいております。歴代のアーティストに共通する点は、「ピグマリオン・デイズで何を挑戦したいか」が、ご応募いただいた時点で明確な演奏家が多い、ということは言える思います。

 ——卒業したアーティストはどのように成長しているでしょうか?

昨年15周年を迎え、これまでに73名の若手音楽家たちが本プログラムに参加してくださいました。卒業後は海外のオーケストラに入団し演奏活動を展開している方、大手音楽事務所に所属しCDデビューを果たす方など、それぞれのフィールドでご活躍されています。

また、ピグマリオン・デイズ参加中の1年間でも、成長を垣間見ることができます。20代前半の学生の演奏家ですと、1年間のシリーズでリサイタルを経験する機会はなかなかないので、短い期間でレパートリーを増やし、それをお客様の前で実際に披露する経験を通し、演奏技術のみならず、ステージ上でのアーティストとしての所作、振る舞いなどを体得し、1年間でアーティストとしてぐっと成長しているように感じます

ピグマリオン・デイズでは、お客様にアーティスト自身のことを知ってもらい、音楽を身近に感じていただく機会を作れるよう、コンサートの途中に短いトークの場面を設けています。皆さんはじめは慣れないことなので、たどたどしかったりしますが、シリーズも後半になりますと、慣れて自信をもってお話できるようになっています。トークを通じて、お客様とのコミュニケーションの仕方も学べているかと思います。

お客様にとってもクラシック音楽や音楽家を身近に感じていただく機会になるようで、ピグマリオン・デイズで知った演奏家の、ネクサス・ホール以外で開催されているコンサートにも足を運んでいただいたという声も多くいただいております。

2019年参加アーティストの吉見友貴さんによるトークの様子。自身のエピソードを交えながら、演奏曲目についてお話します。
©T. Tairadate