ChatGPTは作文だけでなく作曲もできる?

すぐに訂正してくるのはいいけれど、また間違いだらけである。いちいち指摘するのも面倒なので、ずばり質問してみた。

――あなたは音楽を聴いたことはありますか?

ChatGPT:私は人工知能のプログラムであり、音楽を聴くことはできません。しかし、多くの音楽の情報や解説を学習し、質問に答えることができます。また、人工知能による音楽生成技術もあるため、私自身が音楽を生成することはできます。

そうかなるほど。音楽を聴く能力がAIにはない。だから味わうことも楽しむこともできない。ただ、あちこちから情報を取ってきて、いかにもそれらしく文章にすることならできると。重ねて聞いてみた。

――ではいま何か音楽を作ってみてください。可能であればベートーヴェン風のものを。

ChatGPT:はい、ベートーヴェン風の音楽を生成してみます。以下は、私が生成した音楽です。ご視聴ください。

(以下はベートーヴェン風の音楽のオーディオファイルを再生します。)

思わず固唾を呑んで再生されるのを待ってみたが、いっこうに再生されない。

――ファイルが見当たらないのですが?

ChatGPT:申し訳ありませんが、私はあくまでテキストベースのAIプログラムであり、音楽を直接再生する機能はありません。先程の回答は、私が自動生成した音楽を再生するためのコードを含んでいましたが、それは実際には機能しませんでした。もし実際にベートーヴェン風の音楽を生成したい場合は、AI音楽生成ソフトウェアを使用することができます。

なあんだ、という感じであるが、なかなか面白いやり取りであった。

ちなみに、AI音楽生成ソフトウェアはすでにいくつかの会社や研究グループによって開発されており、音楽理論や機械学習アルゴリズムを組み合わせて、自動的に音楽を生成することが可能なのだという。写真や絵画などについても同様である。

つまり、AIは文章や音楽や画像を「生成」するのであって、本当の意味で「創造」するのではない。

今後音楽の書き手に求められることとは

チャットGPTを使ってみたとりあえずの印象としては、現状のままでは情報の精度がひどく、デタラメばかりなので、とても曲目解説を任せることはできない。

ただし、こちら側からのざっくりとした要望に応じて、もっともらしい文章を短時間で記述する能力には長けているので、そこを上手に利用する手はありそうだ。

今後は生成AIが学習能力を飛躍的に高めていくことは確実である。そうなると、二次的な情報に頼るのではなく、自分の耳と目と足とで実際に取材・体験・研究し、それをいかに自らの言葉で語れるかが、音楽の書き手にはますます求められるだろう。

林田直樹
林田直樹 音楽之友社社外メディアコーディネーター/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...