私は、ドイツ育ちの中川優芽花の演奏を初めて聴いた。聴く者の心を強く揺さぶるようなそのパフォーマンスに感銘を受けた。

「ノクターン」作品62-1では、作曲家の晩年の心をデリケートに描き出していく。「エチュード」作品25-6では、バスの表現も豊かで、立体感のある音楽を作り上げた。そして「バラード第3番」。彼女の指先から生み出される柔らかな音のヴェールが、客席を包み込む。第1主題の最初の1音が鳴り響くと、あたたかな光が差し込むような美しい情景が浮かんでくる。あたかも目の前でドラマが繰り広げられているようなリアリティに満ちた演奏であった。
(10月7日午前・カワイ)
進藤実優は、前回のセミ・ファイナリスト。
「ノクターン」」作品2
(10月7日午後・スタインウェイ)
