【中川優芽花】聴く者の心を強く揺さぶるパフォーマンス

私は、ドイツ育ちの中川優芽花の演奏を初めて聴いた。聴く者の心を強く揺さぶるようなそのパフォーマンスに感銘を受けた。

10月7日、第1ステージにおける中川優芽花 ©Krzysztof Szlezak

「ノクターン」作品62-1では、作曲家の晩年の心をデリケートに描き出していく。「エチュード」作品25-6では、バスの表現も豊かで、立体感のある音楽を作り上げた。そして「バラード第3番」。彼女の指先から生み出される柔らかな音のヴェールが、客席を包み込む。第1主題の最初の1音が鳴り響くと、あたたかな光が差し込むような美しい情景が浮かんでくる。あたかも目の前でドラマが繰り広げられているようなリアリティに満ちた演奏であった。

(10月7日午前・カワイ)

【進藤実優】情熱みなぎる演奏に圧倒的支持

進藤実優は、前回のセミ・ファイナリスト。

「ノクターン」」作品272は、歌曲を聴いているかのような演奏。速度に微細な緩急をつけてメロディを優美に歌い上げ、夢想的な雰囲気を醸し出す。「ワルツ」作品341では、スタインウェイの音質を活かし、煌めくようなサウンドを生み出した。「エチュード」作品25-6における、揺れ動く三度の重音が醸し出す色彩の美しさは、たとえようがない。「バラード第4番」は、進藤らしい情熱みなぎる演奏。客席から圧倒的な支持を得ていた。

(10月7日午後・スタインウェイ)

10月7日、第1ステージにおける進藤実優 ©Wojciech Grzedzinski