【小野田有紗、島田隼、東海林茉奈】

小野田有紗は、2015年のこのコンクールでは第2次予選まで進出し、2021年も予備予選に出場している。「ノクターン」作品48-1における淡く透き通るような叙情性は、聴く者の心をつかんで離さない。(10月7日午前・スタインウェイ)

10月7日、第1ステージにおける小野田有紗 ©Krzysztof Szlezak

島田隼は、早い時期からアメリカで研鑽を積んでいるピアニスト。硬質の透き通るようなサウンドを通し、美しく一つの音楽にまとめ上げていた。「ノクターン」作品48-1における内声の繊細な色合い、そして「バラード 第2番」ではファンタジーあふれる演奏を聴かせてくれた。(10月7日午後・ヤマハ)

10月7日、第1ステージにおける島田隼 ©Wojciech Grzedzinski

東海林茉奈は、2021年のこのコンクールでは予備予選に参加、またショパン国際ピリオド楽器コンクールの本大会にも出場している。このラウンドでは、ペダルを絶妙にコントロールし、「ノクターン」作品27-2では即興的な装飾を取り入れていた。「ワルツ」作品34-1の細やかなフレージングの表現や息遣いなど、ブリリアントなエッセンスを際立たせたパフォーマンス。完成度の高い演奏だったと思う。(10月7日午後・カワイ)

10月7日、第1ステージにおける東海林茉奈 ©Wojciech Grzedzinski

注目される海外のコンテスタントたち 

ヨナス・アウミラー(ドイツ・カワイ)は、深い洞察を経た、熟練した演奏を披露。完成度の高い音楽を示したケヴィン・チェン(カナダ・スタインウェイ)、音楽を細部にわたり丁寧に描き上げたエリック・グオ(カナダ・スタインウェイ)、日本でも前評判の高いDavid Khrikuli(ジョージア・スタインウェイ)、落ち着いた優美な音が魅力のイ・ヒョク(韓国・スタインウェイ)とハオ・ラオ(中国・スタインウェイ)、エリック・ルー(アメリカ・ファツィオリ)は10年前のこのコンクールにおける第4位の入賞者。ユニークな解釈のPiotr Pawlak(カワイ)、そして、Zitong Wang(中国・カワイ)はダン・タイ・ソン門下。

10月4日、第1ステージにおけるヨナス・アウミラー ©Wojciech Grzedzinski

また、ピヨトル・アレクセヴィッチ(ポーランド・カワイ)、Xuehong Chen(中国・スタインウェイ)、Yang Gao(中国・カワイ)、Adam Kaldunski(ポーランド・ファツィオリ)、Xiaoxuan Li(中国・スタインウェイ)、Philipp Lynov(中立参加・スタインウェイ)、Ruben Micieli(イタリア・スタインウェイ)、Jacky Zhang(イギリス・スタインウェイ)も気になる存在である。

そして、Yifan Wu(中国・スタインウェイ)、Zihan Jin(中国・カワイ)、Zhexiang Li(中国・スタインウェイ)、Tianyan Lyu(中国・ファツィオリ)などティーン・エイジャーのピアニストにも注目したい。

道下京子
道下京子 音楽評論家

2019年夏、息子が10歳を過ぎたのを機に海外へ行くのを再開。 1969年東京都大田区に生まれ、自然豊かな広島県の世羅高原で育つ。子どもの頃、ひよこ(のちにニワトリ)...