Vincent Ongは、マレーシア出身でドイツに学ぶ24歳。丸みを帯びたぬくもりあふれる音で、メロディラインをしっかりと刻み込んでいく。サウンドは、ドイツ・ロマンティックを思わせる。「ピアノ・ソナタ第3番」第4楽章での主題の個性的な抑揚など、独特な表現も印象的であった。
(10月15日午後・カワイ)

Zitong Wangは1999年中国生まれ。心の芯の強いピアニストだと思う。彼女は、筆者が第1ステージから注目しているピアニストの一人。思いのままに自身の感性で演奏していく。豊かな音量や多彩な音質、そして幅広い響きの表現は、彼女の強い指のたまものである。
「マズルカ」作品50では、郷愁を淡く漂わせ、同時に作品のさまざまな陰影を深く描き出す。「ピアノ・ソナタ第2番」でも、ほの暗い情熱を漲らせ、作品の内奥へとまなざしを注ぐ。「ワルツ」における、繊細なポルタメントのような歌わせ方も心憎い。
(10月16日午前・カワイ)

2001年生まれのYangは、アメリカを拠点に活動している。たっぷりとメロディを歌い上げていた演奏が心に残る。重みのある明るい音は、彼の音楽の特徴。「スケルツォ第4番」は、輝くようなサウンドで軽快さを引き立て、「マズルカ」作品33でも生き生きとしたリズムで作品を描き上げた。
(10月16日午後・スタインウェイ)

ポーランド出身のPiotr Alexewiczも、このコンクールで注目を集めている。「マズルカ」作品41の多彩な表現! 重みのあるタッチによって、マズルカのリズムを生き生きと鳴り響かせ、言葉を語るようにメロディを奏でていく。躍動感あふれるその演奏は、マズルカの民族舞曲の側面を際立たせる。
また、《アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ》の前半部分など、独自の解釈を示していた。
(10月16日午後・カワイ)
