カナダを拠点とするKevin Chenの「マズルカ」作品41の演奏は、これまでのステージとは少し異なる趣を示した。落ち着いたテンポで音の一つひとつをすくい上げていくような表現が心に残る。どの作品も特徴を的確に捉え、鋭敏な打鍵を通して克明に刻み込み、均整をとって作品をまとめ上げていた。
(10月16日午後・スタインウェイ)

Eric Luは、手を痛めたために演奏順が変更された。生彩を欠いていた点は否めないものの、高いクォリティを保ったパフォーマンスは見事。全体を通して美しい抒情性をたたえたショパン演奏であった。「ポロネーズ」では、初期のシンプルなスタイルを大切にし、ペダルを抑制して音楽をすっきりと構築。
(10月16日午後・ファツィオリ)

Yang (Jack) Gaoは2003年中国生まれ。渋みを帯びた重い音で、メロディをたっぷりと歌い上げた。「即興曲第3番」の中間部では、カワイの低音域のまろやかな響きを活かして、心に迫る情趣を醸し出す。作品に対するひたむきな思いは十分に伝わってきた。
(10月14日午前・カワイ)
Eric Guoは、第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール優勝者。全体を通して、緻密に音楽を作り上げていた。打鍵のタイミングや和音の奏法の表現には、ピリオド的な奏法も感じられた。
「マズルカ」作品59の、息遣いのきめ細やかさは見事。第1曲(イ短調)中間部に入るところでの微かな色合いの変化は絶妙であった。また、第3曲の中間部では、リズムを繊細に刻み込んで音楽に豊かな陰影をもたらした。
(10月14日午前・スタインウェイ)
Hyuk Leeは前回のファイナリスト。ありのままのショパンの作品像を聴く者に示してくれた。曲の各部分を滑らかに結びつけ、音楽に自然な流れをもたらしている。たとえば「ピアノ・ソナタ第3番」も4つの楽章を一つの流れの中で美しくまとめ上げた。また、「バラード第3番」でも、音楽的要素を極端に対比させず、表情の一つひとつに丁寧に彫琢を施す。
(10月14日午後・スタインウェイ)
ポーランド出身のPiotr Pawlakは、個性豊かな演奏を聴かせてくれた。深い思索を経た彼の音楽は、強い説得力をもっていただけに、筆者はこの結果をひじょうに残念に思う。コンクールではなく、彼のコンサートを聴いているかのようであった。
(10月15日午後・カワイ)