コンテスタントの感情を捉える

©WojciechGrzedzinski
©WojciechGrzedzinski

——戦場とコンクール、まったく異なる場所にも思えますが、撮影するうえで共通する部分と、まったく違うと感じる部分はどんなところでしょうか?

グジェンジンスキ コンクールというのはとにかく美しい音楽とともにあり、創造的な環境のなかで撮影します。それに対して戦争というものは、およそ人間が体験し得る最悪な状況です。死の危険が隣り合わせにあり、写真を撮る私自身にとっても危険な場所に身を置くことになります。

しかし、コンクールにおいても戦場においても、写真家としてもっとも大切にしていることは同じです。それは、被写体の感情をどう写し出すかということ。コンクールの場では、最高のショパニストの称号を目指す人たちが、極限のプレッシャーにさらされながら戦う場所です。そのさなかの感情を写し出したいと思っています。

©WojciechGrzedzinski
©WojciechGrzedzinski
©WojciechGrzedzinski
©WojciechGrzedzinski

——コンテスタントとはコミュニケーションを取られますか? それとも完全に気配を消していらっしゃるのでしょうか?

グジェンジンスキ 彼らの性格や状況によっては話をすることがあります。例えばコンテスタントがオープンな性格で話をしたいようなタイプであれば、私も喜んでお話ししますし、反対に集中したいようでしたら、ストレスを感じさせないように距離を取ります。

しかし、大抵、練習室での時間は、彼らの「リラックスしたい」「自分は一人ではないと思いたい」という感情が読み取れるので、話をしたりジョークを飛ばし合ったりすることが多いです。

©WojciechGrzedzinski
©WojciechGrzedzinski

——たしかに練習室での表情が意外にも柔らかくて驚くことがあります。

グジェンジンスキ しかし、いよいよ出場の直前になり舞台袖の暗がりへ向かうと、ほとんどのコンテスタントが集中状態に入ります。彼らは静寂を必要とするので、話しかけることはせずに、距離は近くても自分の存在が邪魔にならないように気配を消すようにしています。どのコンテスタントにとっても、いかにストレスなく本番を迎えられるかを考慮する必要があります。