ヴァルデモッサで骨身にしみる寒さと静けさを体験

ショパンが過ごした時期のマヨルカは雨季で肌寒く、彼の体調はどんどん悪化していきました。地中海の西側にある温暖な気候の島ですが、冬には雪も降るそうです。

彼がマヨルカ島に滞在したのは11月から2月半ばまで。私が訪れたのは、ショパンよりもひと月後になりますが、その日は曇天で気温は13℃。天候は変わりやすく、毎日強い風が吹いていました。その寒さは、体力に自信のある私でも身体に堪えました。

人里離れたこの場所で、ショパンは『24の前奏曲』など創作の筆を進め、サンドは『マヨルカの冬』を執筆します。『マヨルカの冬』は、売店で日本語版も販売されていました。

ショパンが過ごしたその村に、少しでも長く滞在したいと考え、私はヴァルデモッサに泊まってみました。日本から予約した宿は、村の中心部から1.1km下ったところにあります。そこへ行くまでの道も、ほとんど石畳でした。

ショパンが過ごした環境を体験したくて、ヴァルテモッサの小さな宿Son Niu Vell-La Hermossaに宿泊。そこは完全な静けさに包まれていました

宿の女主人はスペイン語かカタロニア語を喋っていましたが、翻訳機で英語に変換してくれたので、意思疎通に問題はありませんでした。

ホテルというよりも、トイレ・シャワー付きのペンションのような趣の小さな宿でした。基本的に石造りで、古い建物でしたが、セントラルヒーティングのほかに、エアコンも完備。窓は、雨戸と薄いガラス、そしてカーテン代わりのような扉の3重構造で、寒さをそれほど感じることはありませんでした。その宿は、車道から少し離れており、静けさの中で夜を過ごし、朝は鳥の鳴き声で目が覚めました。

ショパンが滞在した頃のヴァルデモッサも、時はゆったりと流れ、静けさが支配していたのでしょう。