ピオトル・パヴラク~ショパンの初期作品に相応しい端正なスタイル

第2位のピオトル・パヴラクも2021年本大会の出場者。当初はあまりピリオド楽器に関心がなかったというパヴラク。次第に触れる機会も増え、興味を持つようになったという。

あまり重さをかけない彼のテクニックはもともと古楽器に向いていると思う。第1次予選でも、ブッフホルツで弾いたモーツァルト《幻想曲 ニ短調》ではテーマの再現でヴァリアンテを入れ、ニ長調でも繰り返しのたびにヴァリアンテを入れて楽しそうに弾いていた。補筆部分にはニ短調のテーマやイントロを模したパッセージを挿入していた。

協奏曲では、エラールを選択。明るい音色が彼の音楽性によく合っていた。プレイエルに比べると、オケと共演してもクリアによく聞こえる。

イントロはキラキラした音で弾かれた。第1主題はエリック・グオと対照的にルバートをほとんどせず、ショパンの初期作品に相応しい端正なスタイル。技巧的な場面でも指に任せることはなく、制御されたテンポで折り目正しく弾く。第3楽章もキレのよいタッチで誠実な演奏を繰り広げたが、これまた私の好みから言えばもう少し諧謔性があるとよいと思った。会場は大変な盛り上がりで、プレッシャーの中、立派な演奏を披露したことは賞賛に値する。

ピオトル・パヴラク
ピオトル・パヴラクの舞台では、会場はたいへんな盛り上がりを見せた

ヨンフアン・チョン~第2楽章はよく伸びる音で匂い立つような演奏

第3位は同率で中国のヨンファン・チョンとアメリカのアンジー・チャン。チョンは18歳ともっとも若く、カトヴィツェのシマノフスキ音楽院で審査員長のシヴィタワに師事している。選択した楽器はエラール。少し緊張していたのか、第1楽章はやや硬さが目立ったが、第2楽章ではよく伸びる音で匂い立つような演奏。オケの伴奏が巧みで、両手でテーマを装飾するパッセージは、ことのほか爽やかだった。第3楽章では俄然勢いづき、明るい音、よく弾むリズムで、活き活きと楽しげに演奏された。

ヨンフアン・チョン