誰もが大好きな《小犬のワルツ》

ショパンのワルツの魅力は聴き手の心を最後までとらえ続ける、独自の完結さにあったと言えましょう。完結さとは簡素だとか単純だとかこういうこととは違います。その代表曲の一つが《小犬のワルツ》で、3部形式です。最初と最後の部分では軽快で速度のある回転の音型を連ね、中間部分は対照的に穏やかな優雅さにあふれています。

トゥリラーに始まり勢いをつけるように同じ音型を繰り返し、伴奏はいかにもワルツらしくリズミカルです。一気に駆け上がってはまたくるくると楽し気になり、そして駆け降りる、それから穏やかでおしゃれな中間部分を挿んで、最初の部分をもう一度聞かせ、最後は本当にきらきらと輝くように高音から転がり落ちる旋律がいかにもかわいらしく、華麗に終わります。一度聴けば耳になじむ曲想で愛らしく、弾き手の力量によって、軽やかな鳥の羽のようにもなり、まさに万人に愛され続ける名曲に相応しい「3部形式」なのです。

ショパン:ワルツ第6番Op.64-1《小犬のワルツ》