大人気の音楽家ショパン

この《小犬のワルツ》が作曲された1846年は、ショパンがワルシャワからパリに到着して15年。数多くの作品を世に送り出し、どれもが傑作と評せられ、誰もがその演奏をぜひ聴いてみたいと憧れ、超一流の音楽家としての名声に包まれていました。

パリに華麗なサロン(集まり)を開く貴族たちからの招待は連日のようで、レッスンを求める貴婦人は列をなすほど、でもよほどの知り合いの紹介と実力がない限り、弟子になる夢をかなえることはできませんでした。名声に包まれる芸術家にありがちなように、ショパンも近寄りがたく神経質な様子を示すこともありましたが、親しみをもって人の輪の中にいることも少なくありませんでした。

幼いころから多くの友人に囲まれていたことからもうかがい知れるように、本当は人懐っこい一面を垣間見せることもありました。友人たちとは政治や社会を熱く語ることもありましたし、気分によっては機知あふれるおどけた様子などで、笑いを取ることもあったのです。