今回はヴァイオリンの名器といわれる「ストラディヴァリウス」を筆頭に、「アマティ」「グァルネリウス」にフォーカスします。一般的にこの3つが「3大名器」と呼ばれますが、ネーミングは、「3大ヴァイオリン協奏曲」、「3大バレエ」、「3大テノール」などと同様にいまや慣用語となっていますね。ほかに「ガダニーニ」というこれまた由緒正しい名器も存在しますが、今回はとりあえず前記3種でいきます。
ちなみに「ストラディヴァリウス」は楽器名、「ストラディヴァリ」は製作者名アントニオ・ストラディヴァリ(1644 [諸説あり]~1737)。「グァルネリウス」も同様で「グァルネリウス」が楽器名、グァルネリが製作者一族名(もっとも知られているのがアントニオ・グァルネリ[1698~1744])。「アマティ」の場合は製作者一族名(もっとも高名なのがニコロ・アマティ[1596~1684])と同じく楽器名も単に「アマティ」と呼ばれます。
この中でとくに知られているのがやはり「ストラディヴァリウス」でしょう。クラシック音楽に詳しくなくてもどこかでこの名前を聞いているはずです。現代でもこの楽器は世界的オークションにかけられることが少なくなく、昨年もニューヨークの有名な楽器商「タリシオtarisio 」主催のオークションで、ストラディヴァリウスの“ダ・ヴィンチ”という楽器がなんと1534万ドル(日本円で約20億7千万円)で落札されたのです(出品者は日本の宗次徳二氏で、2007年より同楽器を所有しており貸与もしていたとのこと)。
この“ダ・ヴィンチ”が一部で展示され、三浦文彰さんがパガニーニの名曲《カンタービレ》などを試奏して「輝かしい」とコメントしています。しかし、こうした“世界遺産的楽器”は実用的というよりは美術品に近く、一般人の眼に触れることなく何百年も厳重に“保管”されていくのでしょう。いずれにしろ、ストラディヴァリウスの“ブランド性”は高まるばかりで、今後は中国の富裕層が所有することが予想されます。