ゴージャス感が格別な《一千人の交響曲》を聴くチャンス到来 

コロナ禍が収束をはじめてから、オーケストラも徐々にマーラーの大編成の交響曲の演奏を開始していましたが、ここにきてとうとう交響曲第8番《一千人の交響曲》がNHK交響楽団により実現します。これは、N響の第2000回定期演奏会の曲目を一般から投票して決まったもので(ほかの候補はフランツ・シュミット:オラトリオ《7つの封印の書》、シューマン:《楽園とペリ》)、いかにこの作品が待ち望まれていたかがわかりますね。

指揮をするファビオ・ルイージは、この作品の聴きどころについて次のように説明しています。

「マーラーが自身の交響曲の集大成と捉えたもっとも重要なシンフォニーでしょう。第1部に賛歌〈来たれ、創造主たる聖霊よ〉が、第2部はゲーテの『ファウスト』終幕の場がおかれ、人間の苦悩から救済へと至る魂の道程です。第2部は合唱やソリストたちが登場人物を演じます。オペラのように、そのシーンが目にうかぶようです」

 

1910年にマーラー自身の指揮で初演されたこの作品は、管弦楽と声楽をあわせて少なくとも800人以上が必要とされます。とにかく出だしから壮麗でダイナミックな音響がさく裂し、ホール全体がまばゆいばかりの色彩で満たされる快感があります。

全曲で80分を超えますが、交響曲とオペラをいちどに楽しめるようなゴージャス感は格別です。マーラーというとペシミスティックと言われがちですが、この作品は別。ポジティブで希望を持たせてくれます。名作ながら演奏される機会の少ない作品の一つなので、このチャンスを逃さずに。

《一千人の交響曲》が聴けるコンサート

・NHK交響楽団

指揮:ファビオ・ルイージ

合唱:新国立劇場合唱団、NHK東京児童合唱団

独唱:E.スティッキーナ、V.ファルカシュ(ソプラノ)、O.ペトロヴァ(アルト)、M.シャーデ(テノール)、L.ストリフ(バリトン)ほか全8名

12/16、17(NHKホール)