全編でニーノ・ロータの旋律が流れる『ゴッドファーザー』に、クラシックの楽曲そのものの印象は強くないが、実は重要な場面に使用されている。
それはラストのクライマックス・シーン。洗礼式と、敵対するマフィアのボス等を始末する場面で流れるオルガン曲で、これはJ.S.バッハ「パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582」。
J.S.バッハ「パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582」
教会の場面から始まるので、まるで教会の中で演奏されているような効果として使われている。そして、そのままクライマックスの射殺場面で使われるロータ作曲のトッカータ風のオルガン音楽にブリッジされる。知らない人が聴けば、同じ作曲家の曲の一部と思うかも知れない。
もう1曲。モーツァルトのオペラ《フィガロの結婚》のケルビーノのアリア〈自分が自分でわからない〉が、冒頭の結婚式シーンで、女性歌手が顔出しで歌っている。イタリア民謡やそれに類する音楽が続く場面で、イタリア語とはいえ、モーツァルトを入れているのは心憎い。
モーツァルト《フィガロの結婚》第1幕よりケルビーノのアリア〈自分が自分でわからない〉
クラシック音楽調のロータに加えて、こうした音楽を採用したのは、実はフランシス・フォード・コッポラ監督の父が音楽家であることと深く関係している。