英国音楽が中心でありながらも、多様で包括的な要素が重視された今回の選曲には、異文化間、宗教間の対話を尊重する国王の深い信念が反映されていました。
典礼前の演奏を担当した指揮者、サー・ジョン・エリオット・ガーディナーは、BBCラジオ3のインタビューで、国王についてこのように語りました。「彼は、王室の中で何世代にもわたってもっとも音楽に造詣の深いメンバーであり、ひじょうに無私な方法でこの国のあらゆる形態の音楽制作を奨励し、ハーモニーの原則に立脚しているのです。ハーモニーとは、音楽だけでなく、農業のあり方、自然のサイクルのあり方、そして社会のあり方にも当てはまる、広い意味でのハーモニーです」。
国王はフィルハーモニア管弦楽団、イギリス室内管弦楽団、英国王立音楽大学など、数々の芸術団体のパトロンであり、音楽教育にも熱心に取り組まれてきました。1976年に設立された皇太子基金(The Prince’s Trust)は、これまでに100万人以上の青少年を支援しました。これは、エリザベス2世や他の王室メンバーの活動とは異なり、国王自身が独自に進めてきた活動です。
半世紀前から始まったこれらの芸術支援活動は、これまであまり注目されることはなかったものの、今回の戴冠式を通じて、少なくとも音楽と音楽教育の社会的な重要性について、より多くの人々に理解されるきっかけとなったのではないでしょうか。そして現在、英国芸術界が直面する政府の厳しい資金削減のなか、音楽が持つ力が明確に示されたように感じました。
音楽界にとっても新たな時代が到来。God Save the King!