男性はポワントをはかないのか? という質問をよくいただくが、ポワントで踊る例をいくつか挙げておきたい。まず男性ばかりのバレエ団、トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団。このバレエ団は、主に古典バレエのパロディを上演しているが、サン=サーンスの音楽に乗せた名作『瀕死の白鳥』など、パワーがありすぎて抱腹絶倒の面白さ。

通常のバレエ作品では、アシュトン版『真夏の夜の夢』のロバのボトムや、ヌレエフ版『シンデレラ』の継母役の男性舞踊手がポワントで立って踊る例がある。

トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団『瀕死の白鳥』

ともあれ、ポワントはやはりバレリーナの特権である。最後は『瀕死の白鳥』の貴重な映像で、ポワント技巧の粋を味わっていただきたい。踊っているのは、パリ・オペラ座の歴史を築いた名花イヴェット・ショヴィレ。『瀕死』にもいろいろな振り付けがあるが、最初から最後まで爪先立ちで通す例は非常に珍しい。

「伝説」と称されたパリ・オペラ座のイヴェット・ショヴィレによる『瀕死の白鳥』(1967)

渡辺真弓
渡辺真弓 舞踊評論家、共立女子大学非常勤講師

お茶の水女子大学及び同大学院で舞踊学を専攻。週刊オン・ステージ新聞社(音楽記者)を経てフリー。1990年『毎日新聞』で舞踊評論家としてデビューし、季刊『バレエの本』(...