デュオはたし算ではなくかけ算

21. デュオならではの楽しさ、難しさは?

 デュオのおもしろいところは、上手な人同士が組んだからといって必ずしもよい演奏になるわけではないことです。私たちもそうですが、お互いに異なる個性や欠点があるからこそ補い合え、それぞれの長所が生かされるのが魅力だと感じています。単なるたし算ではなく、何倍にもかけ算になる感覚ですね。

リサ ピアニストは基本的に孤独な職業です。ひとりで練習して、ひとりで舞台に出る。だからこそ、デュオではいっしょに演奏できる安心感があって、以前より本番が楽しくなりました。

22. 演奏するのが楽しい曲は?

リサ 演奏していて楽しいなと思うのはフランスの作品です。この間のリサイタルで、デュカスの交響詩 「魔法使いの弟子」とか、ラヴェルの「スペイン狂詩曲」を弾いたのですが、すごく楽しかったです。なかでも、プーランクの「2台のピアノための協奏曲」はいちばん楽しいかもしれません。ふたりの掛け合いもオーケストラとの掛け合いも、その場のインスピレーションで表現できるところもあって。

 最近よく演奏している曲でいうと、中田喜直さんの《日本の四季》という連弾のための作品です。様々な場面でふと現れる唱歌や童謡は美しいですし、日本ならではの繊細な色彩感や四季の移ろいが芸術的に表現されています。いっしょに育ってきた私たちだからこそ、同じ絵を共有しやすいですし、物語性のある作品はいつも演奏するのが楽しいです。

演奏家として、人として、大きな影響を受けた存在

23. 影響を受けた演奏家は?

リサ 私はラベック姉妹が大好き。私たちと同じように姉妹でピアノのデュオを演奏していて、どの曲を聴いても、ラベック姉妹の演奏だとわかるくらい、彼女たちのカラーがあります。憧れでもあるし、大好きな音楽家です。

 今まで習ってきた先生方がいちばんですが、特に伊藤恵先生はピアニストとして尊敬しています。すべての音に対する真摯な気持ちが演奏に表れています。演奏だけでなく、音楽と向き合う過程も含めて、人としても尊敬している先生。学生時代のとても多感な時期に教えていただいていたので、気持ちが壁にぶつかった時に先生の言葉を思い出して、いろいろなことを乗り越えられています。

――どのような言葉がいちばん印象に残っていますか。

 うまくいかない時期もたくさんありましたが、ありのままの私を認めてくださるような言葉をかけていただいて。そんなに理想を高くせず、もっと自分に自信を持つようにと、自分を認めてくれるような言葉をかけてくださったのを思い出します。