続いてはファイナリストのみなさん。
エリザベートコンクールでは、ファイナリストが本番1週間前に未発表のピアノとオーケストラのための作品を受け取り、携帯を預け、外と連絡の取れないチャペルに入居して作品を準備する課題があることで知られています。
静かな環境での共同生活を通じ、日本の4人のファイナリストも、世界から集った仲間と親睦を深めたようです。
第2位に入賞した久末 航さんは、各ラウンド、派手にアピールするようなことなしに、まっすぐ自分のこだわりの音楽を届けて次のステージに進んでいきました。こういうタイプのピアニストが評価されるとは、いいコンクールだな……と毎ステージ安心します。
そして以前久末さんのインタビューをしたときに聞いた、「小さい頃、三輪車で近所の家のインターホンを押しては、おもちゃのピアノを聴かせてまわっていた」、というエピソードを思い出して、一見控えめなこの方の奥には、届けたい音楽があるのだなと思っていました。
セミファイナルのリサイタルでは新作課題曲、ソコロヴィッチ「ピアノのための2つの練習曲」で2曲の順を逆にする(楽譜に演奏順は自由と書かれています)というこだわりも見せていましたが、これは直前まで迷って決めたことらしく、「次のバルトーク『3つのブルレスク』が動、静、動だった。『ピアノのための2つの練習曲』はふつうに弾くと静、動なので、コントラストを生み出すため、動、静の順で弾いてバルトークにつなげた」と話していました。あわせて演奏したベートーヴェンの熱情ソナタも、優しさが滲み出てしまうような第2楽章など美しかった。
そのなかでも強い印象を残したのは、やはりファイナルにおけるブラームスの「ピアノ協奏曲第2番」でしょう。「実は初めて弾いたレパートリーで、ある意味賭けでした。弾いたことのある曲にしたらよかったかも……と何度か思いましたが、結果的には楽しめました」
そして第2位を受賞し「信じられない気持ちでいっぱい。音楽の道は長く続いていくけれど、あたたかく応援していただけたら嬉しい」と話していました。
エリザベートコンクールは、ベルギー各地をまわる入賞者披露演奏会のスケジュールもハード。しかも事前に提出していたファイナルとは別のコンチェルトを弾かなければいけないことになっています。
世界への扉を開いていきなり目の前に横たわる試練! 体調を崩さず乗り切ってほしい。