多くのイギリスの作曲家が少年聖歌隊に属していたことから、合唱曲はイギリスの教育制度と深い結びつきを持ちながら発展してきました。
ハリー・ポッターのホグワーツ魔法魔術学校は、イギリスのパブリック・スクール(=エリートの教育を目的とする寄宿制学校)がモデルになっています。ホグワーツの場合は魔術ですが、学芸を追求するために子どもが幼い頃に親元を離れることは、この国ではよくあることです。
そして子どもたちが厳しい門限、消灯時間や監視をくぐり抜け、さまざまな挑戦に立ち向かうという筋書きは、どこか見覚えのある、現実味のある話なのです(筆者もイギリスの全寮制学校に在学した経験あり)。その厳格な環境は、逆に幼い作曲家たちの冒険心や想像力をかき立てたに違いありません !
ウォルトンもまさにこの背景を持つ作曲家の一人です。映画『ハリー・ポッター』の撮影ロケ地でもお馴染みの、オクスフォード大学クライスト・チャーチ付属の聖歌隊学校に、彼はわずか10歳で入学しました。
妻・スザンナによると、ウォルトンは「自分の音楽教育とは、イギリスの賛美歌をひたすら歌い続けることでしかなかった」とよく語っていたそうですが、それでも「オクスフォードは今まで見た場所の中でもっとも美しいと感じていた」ようです。