國學院大學准教授
町田 樹
ONOTOMOでは、全4回にわたって橋本阿友子弁護士と私の対談を掲載していただきましたが、いかがでしたでしょうか。これまでフィギュアスケート業界では、選手やコーチ、振付師などの関係者に対する著作権啓発が行なわれてきませんでしたので、このONTOMOの記事をきっかけに1人でも多くの業界関係者が音楽著作権に関心を持っていただけたら嬉しく思います。
さて、実はこうして橋本先生との対談記事を連載している最中、なんともタイムリーなことに、米国においてフィギュアスケートと著作権の関係をめぐる大きな出来事がありました。
6月下旬に、米国スケート連盟(U.S. Figure Skating)が「フィギュアスケートの音楽著作権処理に関する方針」(“U.S. Figure Skating Music Policy”)を示したのです。フィギュアスケートの競技連盟が「著作権処理に関する方針」を示すことは、世界的に初めてのことです。
この方針を通じて米国スケート連盟は、米国内のスケーターやコーチ、振付師に対して、プログラムで使用する音楽著作権のクリアランスを、自らで適切に行なうように要請しています。
ただすべての権利処理手続きを選手自らで行なうことは極めて難しいため、米国スケート連盟は、米国の大手著作権管理団体であるASCAP(米国作曲家作詞家出版社協会)とBMI(放送音楽協会)の2団体と交渉し、この2団体によって100パーセント管理されている楽曲の包括的利用権を取得したようです。これに伴い、米国スケート連盟に所属する競技者は、同2団体が包括利用権を認めた楽曲を著作権者から直接許可を得ることなく利用できるようになりました。
まだこの方針については、米国スケート連盟に所属するスケーターたちに対して内示されているに過ぎないため、依然として情報が乏しい状況です。しかし、今回の事態の重要性と緊急性に鑑み、現時点(2024年7月7日)で明らかになっている一次情報に基づき、米国スケート連盟が出した方針の要点と、同連盟の方針が今後、全世界のフィギュアスケート界に与え得る影響について、著作権研究者の立場で解説および提言するコラムを執筆しました。
このコラムについては、以下のリンクからアクセスできますので、橋本先生との対談記事と併せてお読みいただけましたら幸いです。フィギュアスケートのみならず、音楽を用いるすべてのアーティスティックスポーツに共通する内容となっておりますので、広くスポーツ界や音楽界に届くことを祈っています。
◆町田樹「米国スケート連盟が示した『音楽著作権処理に関する方針』についての解説とフィギュアスケート界への提言」(researchmap):